十二話 不穏な翳り
予告した通りです。 明日からは通常に戻ります。
ギルド職員が出ていってから、数分続いたギルド長室の静寂が、葉加瀬の立ち上がる音によって破られた。
「……どう思う?」
「どう思うと言われてもね……。端的に言うと、あり得ないとしか」
「だよね……」
カップにコーヒーを注ぎ入れながら、緋月の問い掛けに葉加瀬は答え、ポットを静かに置いた。
その間緋月は真面目な顔で、机に両肘を立てて寄りかかり、両手を口元に当てていた。
「一応聞くけど、ちゃんと死んでたんだよね?」
「あぁ。医師立ち会いのもと、いやと言うほど調べたさ。そして主な死因が心臓への刺し傷だった……生きてる可能性なんて無い、医師もそう断言していた」
「……ヴァーンにそう言った魔法、スキルを所持していた形跡も無い……というかまず、ヴァーンはスキルも、魔法も何一つ持っていなかったもんね」
そう。葛葉が戦ったあの強敵は、スキルを何一つ所持していなかったのだ。
この事は、鬼丸に頼まれてヴァーンのことを調べた時に、初めて知ったことだ。
「……でも、奴隷商の依頼を受ける数日前から、何回も魔道具店に出入りしている情報もあった。……うちのギルド職員は優秀だね〜」
あの戦いから三日ほどしか経過していないが、ギルド職員の中でも更に優秀な、諜報部に調べさせてみた結果、ヴァーンの不穏な行動があったことがわかったのだ。
「そんな優秀な部下に、自分の仕事を丸投げするって……」
「優秀ゆえかな!」
葉加瀬の苦言にも、緋月は顔色一つ変えることなくスラスラと言い訳を宣う。
そんないつも通りの緋月に、葉加瀬はもうため息すら出ないと、手を振るのだった。
「けど、ヴァーンの死体が消えたのは少し面倒臭いね。蘇生魔法で生き返されたら……」
「厄介な敵になるだろうね」
「どうにか死体を回収しないと、ね。あの子には休む時間が必要だ」
椅子を180度回転させて、窓の外に広がる青空を見上げて、最愛の葛葉の顔を思いながらボソッと呟くのだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
無能力であそこまで強くなるってカッコいいですよね!そういうキャラは大好きです!
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