十話 ベンチでランチ?
タイトルは気にしないでください。
「はい、ど〜ぞ〜。……これ終わったら、仲良く話そうね!」
「終わります? この数」
「クリスマスまでには」
「不吉ですよ……」
団子の入れられた容器を受け取り、屋台から離れようとした葛葉達に羽衣は声を掛けた。
が羽衣の発言に、葛葉は長蛇の列を一瞥して羽衣に訊くと、羽衣はこれから戦場に行く兵士のような面で、そう言うのだった。
「クリスマス休戦があると良いですね」
羽衣の発言に苦笑していた葛葉は、気を取り直してそう言い返しながら、律と共に屋台を後にした。
その道中も、律は葛葉の手に持っている容器の匂いを嗅ぎながら、目を輝かせていた。
「……律。そんなに見てなくても団子は逃げないよ?」
「いえ! もしかしたら逃げるかもしれません!」
「……このすばじゃあるまいし」
あの世界では野菜が動くが。
その後しばらく歩いていると、子供達が遊んでいる公園の前を通り過ぎようとして、ふと手に持っている団子を見てから一拍置いて律へ顔を向けた。
「……ここで食べる?」
「はい! 食べましょう食べましょう!」
パァーっとにっこりと笑顔になり、律は小走りで公園の中にあるベンチの下までダッシュする。
わんぱくな子じゃ……と元気な律を見ながら、葛葉はそう思ってしまう。律とは同い年だが、元気さが全く違う。
「葛葉さーん!」
ベンチに腰掛けた律は、隣の空いている所をポンポンと叩いて、葛葉のことを手招きする。
葛葉は微笑みながら、歩くスピードを少し上げて律の隣に腰掛けた。
「極東に団子はないの?」
「あるにはあるんですが、こんなに色とりどりではなかったですね」
「へぇ、どんなのがあったの?」
「全部白かったですね……中にあんこが入っていて、甘くて美味しいんです!」
懐かしそうに思い出しながら、律は葛葉の問いに答えていく。
律がこの街に来てから、どれくらい経っただろうか。
借金取りに追われながらも、どうにかこの地にやってきたのも、もう随分前に感じる。
「はい、律の分」
「ありがとうございます‼︎」
律のみたらし団子を手渡して、葛葉は膝の上に荷物を置き、容器を開けた。
きな粉と三色団子、どちらから手をつけようかと思ったが、きな粉はここで食べると大惨事になるかもしれないからそっと、蓋を閉めてから脇に置いとくのだった。
ふと隣を見ると、律がみたらし団子を美味しそうに食べている、口元を少し汚しながら。
「どう? 美味しい?」
「はい! すごく美味しいです!」
葛葉は、律の食べっぷりに微笑みながら、幸せそうに食べる律へとそう聞いた。美味しそうなのは、火を見るよりも明らかだったが。
読んで頂きありがとうございます‼︎
律のことはわんぱくな犬とでも思って下さい、想像しやすいので。
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