九話 お団子屋さん?
これじゃあ【武器屋】じゃなくて【お団子屋】になっちゃう!
正直言ってあの三人のパーティーなら、一千万を二日で稼げることだってできる。だから屋台をする必要もないのだが。
「……ん〜気付かれた」
遠目で眺めていると、羽衣が葛葉の存在に気付き、屋台から出てきて精一杯に、そして元気よく手を振ってきた。
羽衣がそんなことしていると、屋台から出てきたカミラが羽衣の頭に拳骨をして、屋台の中に戻って行った。
頭を抑えながらしゃがんでいた羽衣は、トボトボと屋台の中に入って行って、接客を再開させた。
葛葉はそんな光景を尻目に律の下へ歩いていくと、次第に屋台でテキパキと働く二人の顔が見えてきた。
「律、あんま先行かない」
「あイタ! ……う、う〜、す、すいませぇん」
ワクワクと待っている律へそう声を掛けて、葛葉の居る方へ顔を向けた律の額にデコピンをするのだった。
「それにしても、何であの人たち屋台なんかしてるんだろうね」
「そうですね〜……お強いんですよね?」
「私たちの何倍も」
だが今屋台でテキパキ働いてる姿を見ていると、高レベル冒険者には到底思えない。
律もそう思ったのか、葛葉へ確認をしてきた。
「何か訳ありなんでしょうか……?」
「ん、買うついでに聞こうか?」
かなりの列だったが、徐々に葛葉達の番へと近づいていく。テキパキ度が上がったのだろう、思えばこんな忙しいのに、遠くにいた葛葉を見つけて手を振るって……。
(殴られても文句は言えない……)
羽衣には、ほんの少しだけでも同情してあげようと思った―――。
「―――あ! やっほー!」
列順が葛葉達までに回ってくると、接客していた羽衣があからさまに顔色を変えて、ニッコニコな笑顔で声を掛けてきた。
その隣では黙々と何かを焼いているカミラが立って居た。
「お久しぶりです」
「あ、確かにそうだね〜。……でもお話は後でかな〜、ご注文は?」
「はいはい! この、みたらし? ……団子 と言うものを!」
声を掛けてきた羽衣に、実際会うのは随分久しい葛葉は挨拶を返した。
そのまま和気藹々に話でもしようかとしていたらしいのだが、羽衣がはたと気付いて、葛葉達の後ろにも並んでいる人々の列を見てから、すぐに仕事モードへと切り替えた。
注文を尋ねてきた羽衣に、葛葉の横にいた律は、メニュー表を見ながら書かれた文字を口にした。
「……みたらし?」
「およ? 葛葉ちゃんは気付いたかな!」
聞き覚えのある言葉に、この匂いが何なのかも気が付いた。そしてカミラが今、何をしていて、何を焼いているのかも。
「そう……この屋台で売ってるのは———!」
「お団子ですか〜。異世界ではまだ食べたことないですね」
「……………うん、そう」
大仰な仕草で売っている物を伝えようとしたが、葛葉がそれを無視して、並べてある団子達に目をやった。
「じゃあ私は、きな粉と三色団子を二つずつで」
「はいは〜い。んで律ちゃんは何本にする?」
「う、う〜ん。さ、三本で!」
「はい、分かりましたー。少々お待ち下さ〜い」
注文を聞いた羽衣は、テキパキとお団子をテイクアウト容器に似た物に入れていくのだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
今思えば、初登場の時と今とでは、羽衣の口調とかその他諸共全部違いますね〜。多分その気になったら直すでしょう!
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