六話 安否
不穏なお話ではないです!
―――葛葉達はいつもの大通りには向かわずに、大通りからかなり離れた道を歩いていた。
「葛葉さん、ここはどこなんですか?」
「……オリアの街にも、あるみたいなんだ」
「あるって、何がですか?」
テクテクと葛葉の背中を見ながら、律は一生懸命に着いていっていた。自分では見たことも無い風景に、少し興奮しながら。
この始まりの街オリアは、王国の中にあるどの街よりも大きい。
ギルドや宿屋、数多の鍛治師に、訪れる馬車が途切れることのないほどの商業人。その他にも、多くの人々がやってくるのだ。そんなオリアの街にも……いや、どの街にもきっとあるのだろう。
「ん、見えてきたよ」
「……教会ですか?」
「そう。オリアの街の外れにある、教会。……孤児院の役割もしてる」
目の前に広がる光景、建物と広い芝生の庭。
庭の中央には大きな木が一本生えている。柵で囲われ、花が咲いている庭で、幼い声のはしゃぐ声がしていた。
「―――っ! 英雄……様?」
「……こんにちは」
教会の正面入り口に立った葛葉達に気付き声を掛けてきたのは、何処にでもいそうな服装のルプスだった。
「おい、姉貴! それは俺がや……る…………」
洗濯物が山積みに詰め込まれた洗濯籠を、身体に寄せて両手で持っているルプス。
そしそう後ろ、ルプスが出てきた部屋から出てきたガルンディアが、葛葉の存在に気付き、固まった。
「身体は大丈夫?」
「……ええ、大丈夫ですよ」
ルプスは洗濯籠をガルンディアに押し付けて、葛葉の下に近寄ってきた。
その途中、律は葛葉と瓜二つのルプスに驚き、葛葉とルプスの顔を交互に見ていた。
「他の……子達は」
「…………ご覧の通り、元気よく過ごしてますよ」
ルプスは葛葉の言いにくそうな表情に気付き、微笑みながら教会の庭が見渡せる位置に移動した。そして、後ろをゆっくり振り返って、庭で遊んでいる子供達を見る。
葛葉も同様に、庭ではしゃいでいる子供達を見た。皆が皆、楽しそうに、嬉しそうに遊んでいた。ついこの前まで奴隷だったなんて思えないほどに。
良かった、と口にしようとして、葛葉は口を噤むいた。
「…………リリシヤちゃんとリリカちゃんは……?」
「リリカは教会内でシスター様達のお手伝いをしています。……リリシヤは、まだ立ち直れてないです」
最後の方、リリシヤの話になるとルプスが言い淀みながらもどうにか、リリシヤの様子を葛葉に答えた。
それを聴いて、葛葉は下唇を噛み締め拳を強く握った。
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