五話 愛のある行動
ちっとばかし遅れました!
―――それから暫くして。
「……わ、私も着いて行っていいんですか⁉︎」
「え、う、うん。律がいいならいいけど?」
ガタンと食卓に手を付いて、勢いよく立ち上がって聞き返してくる律の圧に、葛葉は気圧されかながらも答えた。
葛葉の隣でご飯をかき込んでいた鬼丸が、手を止めて律と葛葉を交互に見やって、頭の上に疑問符を浮かべる。
「なんじゃ? 今日は何処かへ行くのかの?」
「うん。孤児院とギルドに」
「そうか〜。わしも行きたかったのじゃがなぁ、わしも用があってのう」
他の食べ物を軽く平らげて、鬼丸はむす〜っと頰を膨らませる。
「葛葉よ! わしとも今度デートをするのじゃ!」
「デート? 別に良いけど」
「にひひ、言質取ったのじゃぁ〜」
と呟きながら鬼丸は食器を片付けて、リビングを後にするのだった。
葛葉が鬼丸が出てくのを見届け、顔を再び横に向けると、パンを机の上に落として固まっている五十鈴が視界に入った。
「五十鈴ー、大丈夫?」
「……」
「あー安心して、五十鈴ともちゃんとデートするから!」
「……………………ほ、本当ですか?」
固まっていた五十鈴が動き出し、潤んだ目で聞き返してくるのを葛葉は微笑みながら頷いた。
犬のように、見ただけで嬉しいんだなと思える表情のまま落ちたパンを拾い直して、再び食べ始めるのだった。
ガチャンと扉が閉まり、タタタと葛葉の前に小走りでやってくるのは、可愛らしい服に身を包んだ律だった。
にぱぁっと可愛らしい笑顔で手を振ってくる律は、見てるだけで幸せになってくる。……この感覚は、そう小型犬を見守る感覚だ。
「葛葉さーん! 早く行きましょ〜‼︎」
「分かったよー」
そんな律とは対照的に、落ち着いた足取りで、律の下に歩み寄っていく葛葉は、胸の横部分と、肩から腰にかけてが大きく露出したホルターネックの服を着ていた。
いや、それはいつも通りなのだが。ただ、既にもう私服にも浸透して来ているのが、めちゃくちゃにすっごく嫌だ。
「……葛葉さん、私服もそれなんですか?」
「うん、実はね……」
葛葉は死んだ目で、私服がこの服になってしまった顛末を律に話し始めた。
「持ってた、元々の私服をね緋月さんに押収されちゃって……」
「えぇ……」
「代わりに、これを今後着るようにって言われたんだよね」
葛葉は死んだ目をしながらも、グググと拳を血が出そうなほど握りしめる。(普通にヤバいことされてる……)
律は引き攣り笑いを浮かべながら、葛葉へ寄り添う。同じ露出度が高い戦闘服を着る者同士、葛葉の気持ちは痛いほど分かるのだ。
「五十鈴も渋々だったけどね……緋月さんの圧に折れちゃって」
「大変ですね……」
五十鈴は断固拒否していたが、緋月が泣き喚きそうになったがため、五十鈴は超渋々に許可してしまった。
そして五十鈴は、何故か何度も謝ってきたのだ悪くないのにもかかわらず。
五十鈴のせいではなく緋月の我儘なのにだ。
「まぁ、いつも着てるから、そんなに気にすることはないけどね」
「わー、葛葉さん目が死んでますよー」
スンと雰囲気や表情を変えて、葛葉は歩き始めながら呟く。そんな葛葉の顔を見ていた律が、同様な表情で、隣に並び歩きながら言うのだった―――。
読んで頂きありがとうございます‼︎
いやぁ〜緋月も悪よのう……。ですがこれは愛のある行動でなんです‼︎ だから、葉加瀬に止められた上に周囲の反対を押し切ってやったなんてことは関係ないんです。
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