三十六話 正妻戦争
第一次正妻戦争勃発
途端、葛葉の頭に爛々と光り輝く冠が出現した。
そして詠唱の終わりと同時に、葛葉の眼前まで迫っていた不可視の斬撃が、溶け消えるように霧散した。
「『紅焔鎧―光冠―』」
「はっ、冠被った程度で勝てると思うなよなぁ」
「ほざいてれば良い」
そして二人は一拍置いてから、姿を消した。そして、直ぐに金属と金属の当たる音が響きだした。
「は、早い」
「アイツは分かるんだけどね〜、葛っちゃんの速さは異常だね」
既に二人の戦う姿が見えないカナデは目を見開き、瞠目していた。緋月は、へぇ〜っと多少なりとも驚きながらも、二人の戦う姿を目で追っていた。
無論、葛葉の付与魔法にも驚いていた。
「あの葛っちゃんの魔法……まさか、元の効果と違う効果を重ねることが出来るなんてね」
今の葛葉の姿は、元々の『紅焔鎧』を使用しているときは全く違う。『紅焔鎧』の時は冠なんかあるわけなく、葛葉の纏っている淡い大気と普通の空間の間で陽炎が起こることもない。
『紅焔鎧』だけでは絶対に起きない現象だ。
「派生と言うより、『進化』と言った方が正しいじゃろうなぁ」
「……進化?」
「うむ、葛葉の持つ魔法が上位の魔法へ至ったと言うことじゃ。冒険者で言うところの・・・レベルアップじゃな」
音もなく後ろから腕組みしながら現れた鬼丸に、二人は一瞬驚いたが、鬼丸の言葉に引っ掛かりカナデが聞き返した。
魔法の進化なんて緋月ですら聞いたことがない。
確かに、異世界転生系アニメやVRゲーム系のアニメにはありがちな設定だが。
この世界にはそう言ったことは一切ないのだ。ファイアーボールの上ならフレイムだとかそんな感じで決まっているのだ。
「そう言うのもあるんだ……」
「まぁじゃが、葛葉だけじゃろうな。流石じゃな! わしの嫁は!」
「伴侶でしょうが‼︎ それに葛っちゃんはボクの奥さんだよ‼︎」
「いつから英雄様がお二人の物になったんですかっ⁉︎」
と鬼丸の余計な一言に、緋月が過剰に反応して、葛葉のことが大大大大大好きなカナデも反応するのだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
題名の割には内容がそんなに合ってないんですよね……。まぁ、争ってるのは事実だからね。
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