三十四話 現実離れ
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「―――任せるがよいのじゃ‼︎」
ふとそんな声が、その場の全員の耳に届いたと同時だった。地響きが鳴り始め、地面が揺れ動きだした。頭上からパラパラと小さな石片が落ち始め、次第に岩となって落ちて来る。
全員が頭上を見上げると、差し込んでくるはずない光が差し込んできたのだ。
『―――っ⁉︎』
「……全く、わしの目を掻い潜れると思っておったのかのう。して、うぬは……何度、わしの可愛い可愛い葛葉を傷付けたのじゃ?」
光の差し込む方に目を向ければ、そこには小さな人影があり、今しがた――奴隷商の隠れ家である小山を、マヨネーズやソースの蓋のように開けた、鬼丸が居た。
「……うっそぉ」
その余りにも現実離れし過ぎている鬼丸の行動に、さしもの緋月も衝撃を隠せないようだった。
「……巫女、だとっ⁉︎」
ヴァーンがそう言い放った直後だった。鬼丸の姿が掻き消え、一瞬にしてヴァーンの懐に現れたのだ。
そして間髪を入れずにヴァーン目掛けて渾身のフルスイングをぶちかました。
「―――ッ‼︎」
ヴァーンの身体はくの字に折れ、そのまま遠くにあった石の壁へ激突し、めり込んだ。
更にその衝撃によって上から石片が崩れ、ヴァーンの身体は落ちていくのだった。
「……な、なんじゃ、大して強くはないのう。…………んにゅ? な、なんじゃその目は! なっ⁉︎ く、葛葉までどうしたのじゃあ⁉︎」
ジトッとした目線で三人から見つめられる鬼丸は、余りの圧に冷や汗を一雫流して、アワアワと焦り始めながら、ジタバタと動き回る。
「……んでも、助かった。良いタイミングだったよ。鬼丸」
アワアワと焦りまくる鬼丸に寄り添って葛葉は親指を立てた。
実際、あのタイミングはとても良かった。あの瞬間で葛葉の擬似的な『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』は時間切れになってしまったのだ。
その証拠に、今の葛葉の髪色はいつも通りの色に戻ってしまっている。
「でも、アイツは私が倒さなきゃいけない……敵なんだ」
「……」
「だから、鬼丸は……」
「ふむ、分かったのじゃ! わしの伴侶はあんな奴には負けんしのう! ボコボコにしてやるが良いのじゃ!」
言うまでも無いと、鬼丸が葛葉の口に人差し指の腹を当てて黙らせながら、自分の胸を叩いて言う。鬼丸のその眼差しは心の底から、葛葉のことを信じている眼差しだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
鬼丸の人外振りはすごいですね! 小山をぱかっとあけるなんて!
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