三十一話 新しいスキル
前回のタイトル名が消失していた!?
目を凝らして、必死に過った物を見つけようとする。
遠くではまた乾いた音が十回聞こえてきていたが、カナデは無心で探していた。
そして、その後直ぐにカナデは過った物を見つけられた。過った物……それは葛葉の冒険者カードだった。
「……っ。こんなに多くのスキルを……⁉︎」
他人の冒険者カードを除くのはあまり良い行いではないが、興味心故にカナデは悪いと思いながらも、葛葉の冒険者カードを見た。
そしてその内容にカナデは目を疑った。
それは葛葉の所有しているスキルの数だ。
大抵の冒険者はスキルは一つしか所有できない。これは遥か昔、神代の世からの絶対普遍の理なのだ。
「……嘘、スキルを同時に使用出来るなんて……‼︎」
葛葉の冒険者カードには発動中のスキルも書かれていたのだ、その数は二つ……一つは『想像』。
そしてもう一つはつい先程新しく取得したスキルらしい。だがそんなのはどうでも良かった、カナデは葛葉に目を向けて声を張り上げた。
「英雄様―――ッ‼︎ 駄目です……その、そのスキルは使っちゃダメです―――‼︎」
―――カナデの声は勿論葛葉に届いている。だが、葛葉はその声を無視し、倒れかけているヴァーンにナイフを持って飛び掛かった。
葛葉の新しく取得したスキル……『死を忘れるな』。誰もが聞いたことのあるフレーズのスキルだ。
発動中、敵対者に対しての憎悪と恨みの丈によって効果のバフが異なる。限界に達した憎悪と恨みは、使用者のスキルを極上させ、相手を殺すことのみ考えることになる。そして相手を確実に殺せば、使用者も死ぬ。
このスキルによって奪われた命は、例え"神の力を以てしても"回復又は蘇生は不可能。
「はぁああ―――――――――――ッ‼︎」
葛葉は吠え、自分の命も顧みずにヴァーンの身体へののしかかり、そして首にナイフを振り翳した。
葛葉を止めようと、痛む身体に鞭を打ち、駆け出そうとしたカナデは、勢い余って転けて倒れてしまい、目端に涙を浮かべて届かぬ背中に手を伸ばした。
ヴァーンはハッと乾笑いをして、口に笑みを浮かべ自分の死を受け入れるように、瞼を閉じた。
葛葉のナイフがヴァーンの首を一センチほど裂いた時だった。何者かが葛葉の身体に抱きつきタックルして、ヴァーンから引き剥がしたのだった。
「―――っ!? 緋月さんッ⁉︎」
「あたたた〜……よく分かんないけど、あの子が必死になってたからさ」
葛葉を押し倒したのは、なんと緋月だった。
緋月はあははと笑い、離れた所で倒れているカナデのことを見た。目端に涙を溜め、緋月の姿を見てホッと安堵の表情を浮かべるカナデに、葛葉は罪悪感を覚えた。
あの子が悲しむ選択をしてしまったと。このスキルを使うなら、せめてあの子が居ない場所でするべきだと。
「緋月さん……私は―――」
葛葉が緋月に顔を向けて声掛けようとした時、顔のすぐ横で火花と共に金属と金属がぶつかり合うことで、鳴り響く不快な音がした。
「……チッ」
「―――ボクの葛っちゃんに、何しようとしてんの?」
音と火花の原因であるヴァーンは、防がれた事を確認すると、舌打ちをしてから大きく後ろに飛び退いた。が、着地する瞬間に足の力が抜けたのかミスってしまったようだ。
それは葛葉も同様で、途端に足が震え力が抜けた。
その原因は緋月の殺意の籠った声だった。
(嘘っ……)
葛葉は他にも驚いていた。隙をついて来たヴァーンに驚いたのだ。
何故なら、葛葉は間違いなくヴァーンに十発も銃弾を打ち込んだのだ。大抵の人間なら絶対に死ねる弾数なのにだ。
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『死を忘れるな』でメメント・モリと読みます! 中二臭いですね!
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