二十八話 覚悟
覚悟するの遅くね?
「……」
だが男は焦らずに、目を瞑って沈黙する。一切音を立てず、ただ棒立ちになる。
そしてそれは一瞬だった、遠くから飛来する石が、カナデと入れ替わったのだ。カナデはプロ野球選手の投げた野球ボール並みのスピードで、ナイフを逆手に持って男へ斬りかかろうとした。だが結果は、
「――っ!」
男の剣がカナデの肩を裂いたのだった。
カナデは斬られた衝撃によって、体勢を大きく崩してしまい、地面に勢いよくぶつかってから、地面に身体を擦ることで、やって止まるのだった。
「うっ……くっ」
肩に大きな裂傷、右半身は地面に擦ったことで擦り傷だらけになってしまった。
「さぁて、これで終めぇだぜぇ?」
スタスタとゆっくりと、倒れているカナデに近寄って、男はカナデの胸に剣を突き立て見下しながら、そう言った。
「そう、ですか……」
顔を痛みに歪ませて、カナデは洗い息をしながら、男の顔を睨んだ。男がそれをみて、剣を引き離し大振りで突き刺そうとした瞬間、またしてもカナデの姿が消えたのだ。
「チッ、どこに行きやがった……」
面倒クセェと悪態を吐きながら辺りを見回していると、物陰からカナデが出て来たのだった。
男はそれを見て、口を歪ませて剣を振り下ろす。そのまま何事もなく振り下ろせれば、カナデを確実に殺せるはずだ。そう、何事も無ければだ。
男は剣を振り下ろそうとして、またカナデの姿が掻き消えたことに気付いた。
「チッ!」
何回も何回も、イタチごっこにはもう飽きてきて集中力が散漫になった頃、ハッと気づいた。
すると、後ろからまた殺気がして来たのだ。直ぐに振り向いてみると、思った以上にカナデは接近していた。男は咄嗟にカナデの腹部に蹴りを入れた。が、カナデの口元を見て、目を見開いた。
「すると……思ってましたっ!」
痛みに堪えながら、カナデはしたり顔で呟いたのだった。
「お願いします、【英雄様】―――ッ‼︎」
瞬間またカナデは呟きと同時にスキルを行使した。男が耳を疑うような呟きと同時に。
瞬きをした瞬間、目の前からカナデの姿が消えた。その代わりに、見下していた少女が現れたのだ。
何か物を男に突き付けていた。男が剣を振り抜くよりも早く、葛葉の攻撃のが早かった。
「―――っ⁉︎」
乾いた音が三発聞こえたと同時に、男は肩と腹部に痛みと衝撃を感じた。
「―――んだぁ……? ぐっ……うっ、なんだぁ?」
ボタボタと血が溢れ、流れ、床に落ちていく。血に感覚などないはずが、その感覚だけは嫌と言うほどに感じれた。
「……」
男が傷口を押さえてる間、葛葉はスキルでナイフを『創造』させていた。
痛みに堪え、男はいつでも戦えるよう剣を構え、葛葉の目や表情を見て呟いた。
「……ははっ。なるほどなぁ〜……テメェよぉ、やっとよぉ覚悟ぉ決めやがったんだなぁ」
読んで頂きありがとうございます‼︎
最近は七時の投稿になってきましたね、なるべく早くとは思ってるのですが……。明日こそは!
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