二十七話 残業と苦戦
普通に考えてLv.1が上のレベルのキャラと張り合えるってやばいですね
葉加瀬は直ぐに距離を取り詠唱をし始めた。すると、大地に筆舌しがたい程の大きさの魔法陣が展開された。
「手早く終わらせようか……」
葉加瀬が呟き下に向けていた掌をクルッと空に向けた、その直後、魔法陣から八つの何かが天に向かって飛び出したのだ。
それは黄色や赤、黒色に紫、青や緑に、オレンジががったピンク色や薄紫色の八つの竜に似た蛇だった。
「『黒雷』」
再び葉加瀬は詠唱を唱えた。すると、太陽光を完全に防ぐ暗雲がどこからともなく立ち込め、黒い雷が走った。その黒の一閃は寸分狂う事なく『ワイバーン』へと向かって行く。
そして一瞬にして『ワイバーン』を黒炭にし、滑空していた『ワイバーン』を撃墜するのだった。
「まだまだ、か」
黒炭になり煙を立てる『ワイバーン』の死体の向こう側に、ゾロゾロと魔獣が姿を現した。
「残業か……」
と葉加瀬は悲壮感に満ちた声で呟いた。
「――チッ、厄介だなぁ〜」
「ッ!」
カナデの剣撃をいなし、男は邪悪な笑みを浮かべる。
男が厄介と口にしたのはカナデのスキルだ。対象と自分、対象と対象を入れ替えることが出来るスキルだ。分かりやすく言うと、呪術廻戦の東堂葵の術式だ。違う点を挙げるとすれば、IQが53万も入らず、呪力を使わない上に、ノーアクションで発動することができる所だ。
(――っ。まぁた、きやがった)
気が付けば男の目の前の光景がすっかり変わっていた。パチクリと瞬きし、直ぐに周りを見渡し、カナデの姿を探した。すると死角からの殺気に咄嗟に武器を構えると同時に、ガキンと甲高い音が鳴り響いた。
「……チッ」
「はは、残念だったなぁ」
攻撃を防がれたカナデはすぐにスキルで後ろに下がり、男に聞こえるようにわざと大きく舌打ちした。
「早く諦めて死ねばいいのに……」
「物騒なこと言うガキだなぁ〜。が、テメェがよぉ俺を殺すぅなんざ……アリンコがドラゴンを殺すくれぇ無理な話なんだよぉ」
「そうですか」
ずっと戦い続けているカナデは、体力がもうあまりないのだ。だが男は息を切らしてもおらず、平然と立っていた。
「……なら、アリンコがドラゴンに勝てるわけがない……という道理を覆して上げますよ」
「はっ……バカ言ってんじゃぁねぇよぉ」
カナデの言葉を男は一蹴した。そしてそのまま二人は動かずに、ただどちらが先に動くかの読み合い勝負となった。
「……」
「……」
先に動いても後に動いても、カナデは必敗。まずLv.1のカナデがここまで戦えている事が異常なのだ。
そして先に動いても後から動いても、必勝の男は、いつもの狂人じみた顔ではなく、至って真面目な顔になって、カナデの動きを警戒していた。
そのまま時間が過ぎていくかと思われた矢先、パッとカナデの姿が掻き消えたのだった。
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今日は少し遅めになりましたが、明日明後日はなるべく早く投稿しようと思います‼︎
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