二十二話 強者
葛葉は強い敵と戦うことが多いですねー
「……んだよぉ? 頭がぁイっちまぁってんのかぁ?」
子供達の目の前に出た葛葉は、バッと身体を大きくして到来する"ナニカ"を真っ向に受けた。
何度も何度も鈍い音が響き、血が吹き出して骨が折れる。体感的に肉ミンチにされているかのような感覚だ。
子供達もルプスも驚愕し、口元を抑える。リリカは幼い子供達の目元を手で覆い、目の前のグロすぎる光景を見えないようにしていた。
「……こんな、痛み。あなたが、この子達にしてきた事に比べても! 痛くも痒くもありません‼︎」
「ははっ、そうかぁ……とっくのぉとうにぃ頭はイっちまってたんだなぁ!」
心の底からおかしそうに、男はケラケラと笑い続ける。だが、葛葉は無数の"ナニカ"に貫かれながらも、ジリジリと男へと向かっていく。
「……ッチ。早めに終わらぁせっかなぁ――‼︎」
男が言うと同時に葛葉の身体を貫いていた"ナニカ"は消えて、葛葉の身体には無数の大きな穴が空いてしまっただけだった。ほぼ即死級の傷なのに、葛葉は倒れることも泣き叫び、痛みに悶えることすらしない。
ハッキリ言って異常だ。
「……――『紅焔鎧』」
男が接近戦に移行しようとして、両刃剣を引き抜き駆けてくるのを葛葉はただ眺めるだけで、何もしようとしなかった。
だがそれは男が瞬きをした瞬間に変わった。穴だらけだった葛葉の身体の傷が、まるで無かったかのようになっており、無傷の状態で両手にはナイフが握られていた。
「どぉうなってぇやがる?⁉︎」
「はぁあああ――‼︎」
葛葉が叫び、火花が散った。男の振り下ろした剣を、葛葉はナイフをクロスさせて受け止めたのだ。
そして拮抗するかと思われた鍔迫り合いは、男の力の方が葛葉よりも遥かに上であったが為に、あっという間に葛葉が押し負けるのだった。
弾かれ、ガラ空きの腹部に男は狙いを定めて、剣を横に倒して一閃。葛葉の腹部には大きな裂傷が生じ、血が吹き出した。
「これぇで…………は?」
致命傷、かに思われたその傷は、葛葉が崩れた体勢を治すのと同時に、一瞬にして治ってしまっていた。男がマジトーンで呟き、ルプス達が驚愕していた。
「……無駄ですよ」
葛葉は腹部に手を置いて、困惑する男を見下しながらボソッと呟いた。
「ひひっ、強がってんのかぁ? ……例えよぉ、テメェのスキルがよぉ、最上位回復魔法と同格であってもよぉ……回復出来る回数にはよぉ、限度があんだろぉ?」
「…………」
「黙りってことはぁよぉ……正解ってこったぁなぁ?」
男はそう言うと、剣を構えて超スピードで葛葉との距離を殺した。一瞬にして懐に現れた男に、葛葉は反応しきれずに、男の攻撃を喰らってしまった。
一つ一つの傷が致命傷であり、全身をいっぺんに『想像』しなければ治らない怪我であった。だがその『想像』の行使は、頭に多大なる痛みが伴ってしまう。その頭痛は、きっとこれまでのどれよりも違うだろう。
(……強い)
この男は、Lv.2である葛葉を圧倒的なまでに凌駕する。
葛葉がどんなに策を弄そうとも、本気を出そうが、この男の足元にも及ばないだろう。
やっぱりこんなのが【英雄】だなんて、間違っている。
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