二十一話 残酷な運命
今日はエイプリルフールでしたね!
「なれるなら性奴隷でも良かったんです。もう処女は失ってますし、でもあの男はそれを許さなかった。割れ物のような扱いで、部屋に閉じ込められたんです」
「……それは、なんでですか」
「さぁ、私には分かりません。……これで良いですか? 聞くに堪えなかったでしょう?」
「……いえ、あなたが生きる気力を失ってしまった原因が知れたので」
「そうですか。……それで、どうしますか? 逃げよう、そう言ってくれるのですか?」
葛葉はルプスの目を見て、そして口を閉ざした。
言えるわけが無い、言って良いわけが無い。そんなに辛い過去を経験した者を、無理矢理に背中を押して、無責任に頑張れなんて言えるわけが無い。
余りにも酷すぎる過去だ。死にたくても死ねない、吹っ切れようとしても出来ない。いっそのこと……
「――私を殺してくれませんか?」
「……っ」
……その方が彼女が救われたと実感できることなのだろうか。
「そ、そんなこと……」
「私はもう疲れました。もう楽にしてください……疲れたんです」
そうやれるならとっくにしているだろう。でも、臆病な少女には出来ない、成れないのだ人殺しには……!
「――っ‼︎ 英雄様、今直ぐ子供達を‼︎」
「――っ?」
突如ルプスが血相を変えて、葛葉に部屋の外に居る奴隷の子達を中に入れるように、身振り手振りをしながら大きな声で指示してきたのだ。
葛葉もただならぬことかと思い、直ぐに扉に向かって駆け出し、直ぐに部屋の外へ飛び出した――。
次の瞬間、"ナニカ"が視界の端を横切ったのだ。そして間も開けずに、鈍い音がした後、何かが勢いよく吹き出す音がしたのだった。
「――………………なんで」
目線を左に向けると、合計六人の奴隷の子達が顔を太い"ナニカ"で貫かれ、血を勢いよく吹かしていたのだ。
そしてバタッと音を立てて倒れたのは、脇腹と左肩の一部が抉れ血を流すリユルだった。
「よぉ〜。なぁにしてんだぁ、おめぇらぁ」
コツコツと廊下に足音を響かせ、ゆっくりとこちらに向かってくる、あの男の姿があった。目線を男から奴隷の子達に再びやる、リユル含めた幼い子達が六人、床に倒れている。
「……くっ!」
歯を食いしばって、葛葉は目から血が出そうになる程、男を睨みつけた。
「――う」
「……ぇ?」
すると小さな声が、奇跡的に葛葉の耳に届いたのだ。リリシヤがリユルの傍に膝をついて、必死に呼びかけしているのにも関わらず、なぜか声が届いてきたのだ。
「……えい、ゆう。リリ……シヤと、皆んな。……頼む」
「――っ」
リリシヤとリリカの声で、リユルの声は聞こえにくいはずなのに、それなのにハッキリと聞こえてしまった。
今までツンとしていた声が、その言葉を言う時だけ、心の底から懇願してくる、優しい声だった。
「皆んな、早く!」
「……あぁ? んだよぉ、なぁにアイツに歩かせてんだぁ? テメェらよぉ――!」
そしてまたしても"ナニカ"が、男の背後から膨れ上がり無数となって襲い掛かってくる。
数が多すぎるため、葛葉だけでは後ろの子達を守り抜くことは出来ない。
だが方法が何一つ無い訳では無いのだ。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
今日はエイプリルフールでしたね! 自分も何かX(旧Twitter)で何か呟こうと思ったのですが……。(例えば今日の投稿は遅れるかもしれません、とかですかね)
なんか自分がそれ言ったら本当になりそうだったので、やめましたねー。
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