二十話 悲劇すぎるヒロイン?
ヒロイン枠ではないのですが。
「ルプスさん。どうして、あの子達の手を取らないんですか……?」
扉の方に一度目線を向けて、ルプスへ戻す。奴隷でいる必要も無いのに、なぜ逃げないのか。
「簡単ですよ。……私は、生きようとしてないんです」
「……っ」
「それなのに生きようと、このドン底から這い上がろうと、足掻くあの子達の重荷になる訳には行かないですよ」
またニコッと、儚い笑顔を浮かべるルプス。生きる気力がない自分は、リユル達の重荷になると……どうして、そう決めつけてしまっているのだろうか。リユルのあの表情、眼差しを見て、ルプスを重荷に感じる、なんてことは無いはずだ。根拠の無い、葛葉の勝手な決めつけであったとしても。
「人は……そんな簡単に生きることを諦めません。……教えて下さい、何があったんですか? あなたに、一体何があったんですか」
それは勝手すぎる言い分だろうか。だがそうであったとしても、目の前で絶望を味わった『あの人』は自殺という選択を選ばなかったし、それは『今の自分』もそうだった。
「……聞いたら、後悔しますよ?」
「それでも、聞かせてください。あなたを助ける為に私はここに来たんです……‼︎」
「ぁ――。……わかりました」
葛葉の覚悟の決まった眼差しや声に、ルプスはとうとう押し切られてしまうのだった。
「……今から13年前、私の里は奴隷狩りに襲撃されました」
「……」
「両親は酷い殺され方をし、里の住人達は弄ばられた挙句殺されました。……まさに、地獄だったでしょうね」
自然と拳を握る力が強まった。話だけでも、その光景が脳裏で鮮明に浮かんで来てしまうのだ。
「……私は弟と共に逃げ出しました。ずっと走り続け、もう無理だって、そう思うまで走り続けました。ですが、結局見つかり、散々痛めつけられましたね」
ルプスは胸に手を置いて、から笑いと共に話していく。辛い過去であるはずなのにだ。
「……そして私は捕まり、弟はきっと死んでしまいました。私の何を見込んだのか、あの男は私を丁重に扱うようになったんです。部下にも、そう命令させていました」
「……あれが⁉︎」
ルプスの話をちゃんと聞いていた葛葉は、思いも寄らないルプスの言葉に、ついつい大きな声を上げてしまった。
「はい、私も最初はびっくりしました。ですが、その時の彼の部下達は死体とも性交をするようなクズ共です。……その日の夜に、私の純潔は奪われました」
「…………それって」
「はい、私は処女ではありません。13年前のあの日、あの夜に、私は無理矢理集団にレイプされました」
葛葉は言葉を失った。
最初にルプスに抱いた印象は、穢れを知らなそうだったが、どうやら彼女は穢れていたみたいだ。
純白な長髪に、色白の肌や細い四肢、モデルさんのような身体は、既に穢されていたみたいだ。
「レイプが終わったのは朝でした。そしてあの男が、レイプの現場を見たんです。予想外にもあの男は私をレイプした傭兵達とそれを止めなかった傭兵達を、皆殺しにしました」
「……」
「……正直、終わって直ぐの時は、何度も自殺しようと思うことがありました。生きていてもいいことはないと、家族も貞操も失った、こんな惨めな女を、誰が救ってくれるのでしょう? と」
何も言えない、何か掛ける言葉を見つける事すら、今の葛葉には出来ない。彼女は幼い頃に全てを失ったのだから、その絶望感を言葉で現すなんて不可能だ。
生半可な覚悟で彼女の話を聞いた自分をぶん殴りたかった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
今回のお話も大分ショッキングですね……。ですが、こう言うキャラは書きたいと思っていたので……。
そしてそして! 祝! 総合評価ポイントが700を突破しました!
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