十九話 瓜二つ
無事今日も投稿出来ましたね!
「―――あの人以外が、その扉を開けるのは随分珍しいですね……」
扉の向こうに広がっていたのは、ゴージャスな部屋だった。当たり前だが、扉もゴージャスだし。ベッドもアニメのお嬢様キャラが寝ていそうなベッドで、家具のどれもが一級品だった。
「……っ」
「あなたが……噂の【英雄】様、でしょうか?」
葛葉が絶句している中、ベッドの上で上体だけ起こしている美女は、ペラペラと話し掛けてくる。
処女雪のように真っ白な髪の毛、穢れを知らない色白の肌。そして何よりも目を惹かれるのは、青空のような淡い色の瞳だった。だが、片方――右眼は不可解な目をしていた。いや、おかしいのは瞳だ。
「あなたは……?」
「私ですか?」
だがそれら全てが、葛葉を絶句させる要因となったわけではない。確かに全体的に純白なのが気になるが。それよりも何よりも、葛葉が絶句した要因は、
「私の名前はルプスと申します。こんな形ですが、一応は『狼戦族』ですよ」
まるで鏡と会話しているかのようだと、そう思ってしまうほどに、目の前の美女は葛葉に似ていたのだ――。
「――聞いてもい〜ぃ?」
「アァ? んだよ」
「……あの時さ、何に驚いてたの?」
木漏れ日に照らされる森の道を歩く三人組。一人が少し先頭を歩いており、もう二人はその後ろを着いていく。
そんな中一人の長身の女性が隣にいた青年に声を掛けた。青年は無愛想にも女性の声に応じ、話を促す。すると女性は少し間を空けてから、口を動かしたのだった。青年は真顔になり、力無く口を動かしだした。
「似てやがったんだよ……」
「似てたって? 何が〜?」
「英雄のガキだよ……」
「……んあ〜。あ、あぁ。あの子かぁ」
ガルンディアの言葉に間を空けて、羽衣は人差し指を立ててピンと納得の意を示し、ガルンディアはそれを見て話を続行する。
「つってもな。俺が姉ちゃんを最後に見たのは、俺が4だった頃だ。そん時の姉ちゃんが6だったけどな」
「ふ〜ん……じゃああの子のこと気になるんじゃない?」
「……」
羽衣のその言葉に、ガルンディアは何も言い返さず、ただ歩き続けるだけだった――。
「――ここに来たのは、リユルのせいですか……?」
「……ご、ごめん。でも、やっぱり! ルー姉ちゃんは、俺達の本当の姉みてぇなもんだったから!」
「……」
ルプスの言葉に、リユルは申し訳なさそうに言い返した。葛葉はそんな二人の顔を交互に見つめる。必死なリユル、何もかも諦めたかのようなルプス。葛葉はどうして、そんなにもリユルが必死なのか、分かった気がしたのだ。
「……リユル。少し部屋を出てもらえますか?」
「――っ。わ、分かったよ……」
トボトボとリユルは、素直にルプスの言葉通りに部屋を出て行った。
そんな後ろ姿を、葛葉が不安そうに見つめていると、
「優しいのですね」
後ろから声を掛けられた。
「……そうですかね」
「はい、優しいです」
ニコッと、初めて笑顔を見せてきた。
ドキッと胸に身に覚えのない痛みが、突如として走った。理由はわからない、なぜ急にこんなに痛むのかも。いや……理由は何となく分かってしまった。
何もかもを諦めた、目の前の一人の少女が、余りにも儚いからだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
まさかのまさか、ガルンディアの姉が葛葉と瓜二つとは……。多分違う点は耳と尻尾だけでしょうね!
面白いと思って頂けたら、ブックマークと表示をお願いします‼︎