十三話 残酷な事件
奴隷っていう話題が出た時点でこうなることは理解できてましたよね⁉︎
「あのガキが?」
「ん? 君、葛っちゃんと会ったことあるの?」
「……あぁ。けど、見掛けただけだ」
「へぇ〜……君がそんなに心配する理由は何なんだい?」
ガルンディアのケモ耳と尻尾を見ながら、緋月はニヤニヤと微笑んで聞く。いつもの彼なら怒鳴って居るだろうが、ガルンディアはただ考え込むだけだった。
「……そんな大層なことじゃあねぇ。ただな」
「ん、言ってみ?」
「………………似てんだよ」
暗い顔で、少し眉を落として、低い声でガルンディアは言うのだった――。
「彼の言う、似てるはきっと、彼のお姉さんのことだろうね」
「お姉さん、ですか?」
ガルンディアが去って行った後、ギコギコと椅子でシーソーをしていた緋月に変わって、葉加瀬が終始疑問符状態だった五十鈴達に説明をし始めた。
葉加瀬の、姉というキーワードに、五十鈴は小首をかしげる。
「あぁ……13年前。あの事件だ」
「……13年前、ですか?」
「奴隷商が、獣人族の中でも最も希少な『狼戦族』を狙った事件なんだが……その行なった行為が問題なんだ」
「行為……?」
13年前だと五十鈴は四歳、律は三歳とまだまだ幼い頃だ。故に全世界から唾棄された、かの事件のことは知りもしない。それにこの事件が起きたのは西側諸国の最東端地域だ。通信機器が無いこの世界において、この場とほぼ真反対の地域で起きた事を知っている訳がないのだ。
「男は皆殺し、女子供は奴隷として捕まえる。……そして、数が多ければその場で殺しても、犯しても、使い物にならなくなっても良いと、されていたんだ」
「……」
「そんな……酷い」
五十鈴は黙り込んでしまい、律は握る力を更に強くして一言呟く。
この王国でも、奴隷が問題視され始めたのは九年前。そして奴隷制度の廃止と、奴隷として生きてきた者達への福祉等が記された法が施行されたのは、今から七年前だった。
13年前なら王国でも奴隷は見かけることすらあるほどだったのだ。
「……傭兵達は自分達の欲望のままに彼らを蹂躙した。生き残った者は、104人だ。元々の数である1800人から、たった一夜にして1696人が殺されたんだ」
「……じゃあ、あの人は」
「生き残った者だよ。そして、彼の姉は奴隷商の雇った傭兵に連れ攫われたんだ。そして、その連れ攫ったのがあの"男"だ」
「それってさっき話していた」
「あぁ」
冒険者時代には『仲間殺し』という蔑称があったほどに、仲間をなんとも思っておらず囮にしたりするクソ野郎だった。色々と行動が問題視され、ギルドは今までどこのギルドもしたことがなかったLv.4冒険者への資格の剥奪をしたのだった。
読んで頂きありがとうございます‼︎
自分でもなんでこんな残酷なことがスラスラ書けるなぁと思っている所です。
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