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九話 隷属

いつもより今日はちょっと多めですね!

「――おい、お前! 何をしている!」

「……っ」


 と葛葉が黙っていると、この部屋の入り口から男の怒鳴り声が飛んできた。振り向いて見れば、二人くらいの傭兵と、犬型の魔獣が二匹並んでいた。


「魔獣……?」


その光景を見て、葛葉は一応身構える。魔獣だと言うのに、その二匹は大人しく葛葉のことを睨んでいるだけだった。


「……っ! お前、あの【英雄】か!」


葛葉の正体に気が付いた傭兵が、ハッとして声を上げた。


「よ、よし! 行け!」


そして直ぐに傭兵達は手に持っていた手綱を離した。

手綱が離されたことを確認して、犬型の魔獣二匹が葛葉を真っ直ぐ見据えて走りながら向かって来た。それを見た葛葉は、『創造』でナイフを造り出し、向かって来る魔獣へ立ち向かう。


(一応、Lv.2になったんだ! 今更、魔獣二匹に負けるなんてことはない! ……きっと、うん。多分そうなはず!)


心の中ではかなり保険を掛けつつも、葛葉はちゃんとしっかりしていた。

まず最初にもう一匹よりも、足が早い一匹が、一早く葛葉に飛び掛かってきたのだ。魔獣の体躯は大型犬並み、はっきり言って孅いように見える葛葉に、勝ち目はゼロだ。だが、それはレベルという概念がない世界での話だ。


「……ッ!」


飛び掛かって来る寸前、葛葉は深く深呼吸をしてから、足を一歩前に出して、思っきし腕を振った。Lv.2の剛腕から攻撃が繰り出されたのだ。

そのナイフの軌道は、口を大きく開けていた魔獣の顎の繋ぎ目――咬筋にクリーンヒット。そのままナイフの刃が魔獣の、皮を裂き肉を断ち骨を砕いていく。そしてあっという間に、魔獣は口から脚部までを、横に一閃され、血と臓物を撒き散らしながら床に落ちた。最後にピクピクと後ろ足と前足が痙攣して、直ぐに身動き一つもしなくなった。


「あと一匹……」


その光景を見ていたもう一匹は、完全に怯えきっていた。それそうだろう、たった今仲間が凄惨に殺されたのだから。


「おい、何してんだ‼︎」


と叱咤するのは未だ入り口に立っている傭兵達だった。魔獣は一度その方向を振り向き、葛葉のことを見る。その行動を見て、葛葉は気づいた。

この二匹も、奴隷なのだと。


「そっか……」


人を隷属させることができるのだ、ならば魔獣などは簡単に出来るのだろう。(流石に限度はあるだろうが)


「ッチ、仕方ねぇ……。勿体ねぇけど、"コレ"使うか」


そう言って傭兵が取り出したのは、一つの小さな真紅の宝石だった。そしてその傭兵は躊躇なく、葛葉に向かってその宝石を投げ付けるのだった。弧を描いて飛んで来る宝石を、葛葉は片手でキャッチした。


「一体……? ん?」


マジマジと宝石を見ていると、グゥルルルという唸り声が聞こえてきた。葛葉は宝石から目を離して、足下に居るであろう魔獣に目を向けると、魔獣は物凄い形相睨んできていて、口からは涎が滝のように流れている。その目は真っ赤に染まっており、遂には目端から血が溢れ出してきたのだ。


「……なっ⁉︎ ――っ!」


その光景に驚いていると、魔獣が何の前触れもなく葛葉の顔へ、大口を開けながら飛び掛かって来たのだった。

だが葛葉はそれを、持ち前の鋭い勘で回避しバク宙をかますついでに、魔獣の顎を足で蹴り上げるのだった。

そしてそのあと直ぐに、綺麗に着地した葛葉は体勢を整えて、短い距離を消えるように疾走して。そして葛葉の姿が入り口前に現れると同時、顎を蹴られ滞空していた魔獣の身体が何等分かに分かれて崩れ落ちた。


「さぁ……あなた達はどうなりたいですか?」


殺気を押し殺せてない微笑みで葛葉は語り掛けた。そして案の定、傭兵達の顔は一気に青ざめて、一目散に逃げていくのだった。


「魔獣……か」


後ろに転がる魔獣の身体へ振り向いてボソッと呟く。

嫌な予感しかしないと、葛葉は顔を少しだけ歪めた。あの狂人なら、やりかねないことだ、と頭の中を過った最悪な考えを、少しばかりか肯定した。


「……あとはあの子達か」


子供の相手をするのが苦手なのに、大人達への信用が無くなるほど酷い仕打ちをされた、そんな子供達を説得させるなんて、葛葉には出来そうにない。

でも出来る出来ないじゃなく、ここであの子達に教えてあげないで、誰があの子達の心を救うというのだろうか。


「……私は、【英雄】だ!」


拳を握り、意を決して葛葉は子供達が居る牢へと向かった――。

読んで頂きありがとうございます‼︎

アニメとかで魔獣の奴隷が出て来た場合、本編同様に凶暴化させる物がありますよね〜。そんなのあるかよと思っていましたが、まぁ実際ありそうですよね……。

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