一話 信じられぬ光景
とうとう5章!
『……私は一体、何のための英雄なんですかっ――‼︎』
「――っ!」
目が覚めるとそこは真っ暗な場所だった。仰向けに硬い石の床の上に寝かされており、身体中が痛い。
「ここ……どこ……?」
覚えているのは、謎の少女と戦ってその後に怪しげな男と出会った所までだ。そこから先は何一つ覚えていないのだ。
「……何、この臭い」
感覚が冴えて来て、そこで葛葉は気付いた。鼻がひん曲がるかのような悪臭に。他にも、呻き声のような物や断末魔、ガチャガチャと金属がぶつかる音も聞こえて来た。
「――よぉ〜……お目覚めかぁ〜?」
「……っ⁉︎」
突如掛けられた声に、葛葉は振り返った。するとそこには、鉄格子の向こう側に葛葉が会った、怪しげな男が不敵な笑みを浮かべながら立っていた。
「おぉいおい、んなぁ警戒すんなぁってのぉ。取って食う訳じゃねぇんだからよぉ〜」
ケヒヒと笑う男に、葛葉は全身の鳥肌が立った。まるで気持ち悪い魔獣か魔物と相対してる気分だ。生理的にも物理的にも、何故か無理なのだ。
「さて……なぁ、お前ぇはよぉ【英雄】なのかぁ〜?」
「……どう、言う意味?」
しゃがみ込み、葛葉と目線を合わせた男が、葛葉の瞳を真っ直ぐと見つめて、容領の得ない上意味のわからない事を聞いて来た。
「……おい、連れてこぉいよ」
葛葉が怪訝そうに聞き返してから、数十秒が経過して男が誰かにそう指示を出した。その指示から二、三分して、男の下にやって来たのは一人の少女。のはずだった。
「…………」
葛葉は絶句した。それは何故か、答えは単純で目の前に信じられない光景が広がっていたからだ。首に首輪をつけられリードを無理やり引っ張られて、全身には切り傷や打撲痕。服なんか着せられてなく、真っ裸で、四つん這いでやって来たのが、その少女だったからだ。
「もう一度聞くぅぞぉ? テメェはぁ〜……【英雄】か?」
再びの意図の分からない質問。葛葉はただ言葉を詰まらせ、どう回答すれば良いのか思考せる。
今、ここで回答しなかったらどうなるんだ? まさか、目の前の女の子が殺されるとか? そんなの質問の意味がない! どう言う意味なんだ……と。
時間もなさそうだ。男の手が徐々に後ろに伸ばされていく。ここは適当にでも答えなくては行けないのだ。
「……わ、私は。……【英雄】じゃ、無い」
ただ認めて貰らっただけなのだから。しかも【英雄】らしいことは、何一つしていない。
「…………ヒヒッ、そうかぁ。そうかぁ……その名前でぇ? 英雄じゃねぇだぁ? ……そうか」
次の瞬間、鈍く生々しい軋轢音が聞こえてきた。そして直ぐに、悲痛に満ちた悲鳴が上がったのだ。
「……ぇ?」
その悲鳴は、四つん這いで全裸の奴隷の少女の物だった。目を向ければ、少女の右腕が逆方向に直角で曲がっており、見るに堪えない。
そしてまた、ボキッという痛々しい音が聞こえた。
その音はまたしても少女からだった。直角に折れ曲がった方とは反対の、左肩が脱臼したみたいだった。少女は涙を流して、荒く呼吸をしようとするが、痛みにまともに呼吸ができないみたいで、苦しそうに浅く呼吸をする。
「……――っ‼︎ お前―――‼︎」
その光景に葛葉は激昂し、声を荒げ鉄格子を握り潰すかのような力で、強く強く握りしめる力を込めた。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
本当にあっという間ですね。もう第三部もついに終局です。5章が終わってしまったら、次は四部になりますね! まだ完璧に構想は出来てませんが……。
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