十話 邂逅の時
もしかして運命の出会い!?
「く、クソォ‼︎ おらぁ、早く走れや‼︎ 捕まんだろうがぁ‼︎」
「す、すいません!」
一人のガタイの良い男が、息を切らし表情を怯えさせて、首輪に繋がれている、ケモ耳の少女に怒鳴り散らかす。路地裏に無数にある脇道の中の、一本から男と少女が出て来るのだった。
「クソ、クソクソクソ! んで、こんな事に!」
そのまま二人は別の脇道に走り去っていってしまった。ただ呆然と、今の出来事を眺めていた三人。頭の上には疑問符が浮かんでいた。
「――おい、テメェら。冒険者ならァ、少しは仕事しろや!」
ほけ〜っとしていた三人に、突如として投げ掛けられる罵り。その罵る声の方に目を向ければ、そこにはいつぞやの青年が立っていたのだった。
「……お、お前は」
「たくッ、どいつもこい――っ!」
青年はそう愚痴を溢そうとして、言葉を詰まらせた。それは一瞬、葛葉と青年の目が、合ってしまった時だった。
「――……チッ」
そして青年は、バツが悪そうな表情を浮かべて、小さく舌打ちをしてから、先程の二人が逃げて行った方へ去ってしまった。
「……何だったんだろ?」
その一連の光景を眺めていた葛葉は、首を傾げてただ一言呟いた。
「何だ嬢ちゃん、知らねぇのか?」
「え?」
「あいつは、高レベル冒険者のガルンディアっつう奴なんだ。見ての通り凶暴でな、あの野郎の種族の名前を合わせて、二つ名は【凶戦狼】って言われてんだ」
「……そうなんですか」
凶暴……だが、葛葉には凶暴そうには見えなかった。
何か、心の何処かで焦っているのか、彼の表情はどうにも人の作れる表情では無い。
複雑な思いを抱いてる人物なのでは……? と葛葉は彼が去って行った方向に、顔を向けて心配そうに眉を顰めるのだった。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
はい、恋愛的な意味での邂逅の出会いではないですね。きっと何かあったんでしょうね!
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