九話 漢同士の話し合い……。
漢……葛葉も漢のはずだったんですがね……。
「ほ、本当にいいんですか……!」
「おー良いんだよ。オメェも冒険者になったんだろ? 分かってるだろうが、冒険者の死亡率はたけぇ。だぁから、俺ら男の冒険者はこう言う店でいい夢見させてもらうんだよ」
どうやら、先輩冒険者の隣に居るのは新米冒険者らしい。あのキョロキョロと店を見回すあたり、こう言ったのは初めてなのだろう。
「金は俺が払ってやる! 皮剥けてぇねガキが、クエストで死んじまったら悲しいだろうよ? 思う存分楽しんでこい!」
「は、はい! ありがとうございます、先輩‼︎」
先輩冒険者は鼻の下を人差し指で擦るのだった。それに、新米冒険者は感極まった顔で深くお辞儀をする。何ともまぁ泣ける話なのだろうか……。(そんなこと思ってないが)
ここで一つ、面白いことをしてみよう!
「へへっ、さぁ行くぞ! 男の夢、エデンの中に――‼︎」
そう言って先輩冒険者が歩き出そうとした所で、ニョキっと先輩冒険者と新米の間から、葛葉は顔を出した。それを見て、二人が固まっているのを、しめしめと思いながら葛葉は、
「何してるんですか? 先輩」
「…………………………………………………………ぇ?」
ニンマリ顔で先輩の顔を見て、声を掛けるのだった。先輩は状況を理解するのに数瞬掛かり、かなり間が開いてから、小さく声を発した。
「え、な、ななな何で嬢ちゃんが⁉︎」
「はい、奇遇ですね」
「き、奇遇つったって……ハッ! まさか嬢ちゃんも夢を見に⁉︎」
「そんなわけ無いです。死にます?」
やはり状況の整理がついていないみたいだし、まだ混乱しているようだ。先輩冒険者の言葉に、一瞬の間も開けずに、葛葉は先輩冒険者の言葉を否定した。
「だ、だよな〜……んじゃ、何でここに?」
「いえ、先輩とお連れさんの背中が路地裏に入ってく所を見つけたんですよ。それで気になって」
「マジかー。バレないよう入ったんだがなぁ〜」
先輩冒険者は乱暴に頭を掻きむしり、はぁとため息を吐いて、俺もまだまだだなと呟いたのだ。
「で、先輩。ここはどんなお店なんですか?」
「……分かってるよね?」
「いえいえ、全然全く何なのか分かりませんよ?」
「……はぁ。ここはな、サキュバスの店主が営業してる……言わば風俗だ。男の冒険者の大半はな、ここで漢になんだよ」
「なるほどですね」
「……嬢ちゃんは何でわかるんだよ」
目の前の店を見据えて、多少説明を省きながら先輩冒険者は葛葉にそう説明した。大抵の女性は、後半の方の説明は余りピンと来ないようで、分かる者は少ないのだが。勿論、葛葉には伝わるに決まっている。
「まぁ……そうですもんね。死ぬ時には漢でありたいと、そう願うのは必然ですよね……」
「……んぁ、ま、まぁな」
「今回のは見なかった事にするので……あ、安心して下さいよ? 誰にも言いませんので」
「あぁ、嬢ちゃんの口が硬いことを祈るよ」
葛葉が片目を瞑り、見逃すと言う。葛葉という人物を知っていれば、誰にも言わないと信じれるのだ。
先輩冒険者が新米冒険者の手を取り店に入ろうとし、葛葉がそんな二人に背を向けて大通りに戻ろうとした時だった。
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葛葉は男のときの記憶も持ってるのでね、女心ももちろん男心も分かりきってる、スーパー有能全能美少女ちゃんです!
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