七話 のどか〜な日
今日も早いですね!
ガチャっと扉を閉め、葛葉はリビングに向かう途中、手に持った容器の中に入ってある料理を見ながら、ボソッと呟いた。
冒険者になったカナデとは何回かギルドで話したりして、大体あの子がどういった子なのかは分かってきた。自分で言うのもなんであるが、きっとカナデは自分のことが好きだ。
(あの目……緋月さんや鬼丸とは違った目)
病的なまでの恋眼であり、流石のあの二人もああはならない。それに、あの目になるのは葛葉を見てる時だけなのだ。
「はぁ、困ったなぁ」
はっきり言って迷惑ではない。緋月と鬼丸に比べればカナデなんて赤子も同然なのだ。
それなのにも関わらず、何に困っているかと言うと。
「……行動がストーカーなんだよねぇ」
Lv.2の研ぎ澄まされた五感は、例え五十メートル離れていても視線を感じれる。(カナデの葛葉を見る目が異常すぎるからなんだが)
いつか通報されそうで怖いし、自分のせいで人を豚箱にぶち込んでしまうのは、大変心苦しい。
「とにかく、いつかどうにかしないとなぁ」
リビングの扉を開けて、葛葉は食卓へ戻るのだった。
詳しいことを聞こうとする緋月を押し除けて、カナデから貰った美味しそうなサンドウィッチを皆んなで分けて、食べ始めるのだった――。
――あれから数時間後。
暇過ぎた為、葛葉は散歩に出掛けていた。
空は雲一つない快晴で、太陽が街を明るく照らし出している。風も涼しいと思えるほどには強く、干されている洗濯物が風によってゆらゆらと揺れている。
馬車が大通りを通って行き、子供達がはしゃぎながら走って行く。商人が行く人々に、一つでも多く売ろうと必死に声を掛けている。そしてたまに、冒険者達とすれ違い、ガシャガシャと鎧や武器の音を立てながら通り過ぎていく。何ともまぁ、平和な日なのだろうか。
(こんな世界にも、こんな長閑な日があるなんて……)
世知辛く理不尽だとは思っていた世界が、今は日常系アニメのように優しい。何だか眠くなって来てしまう。
「ん?」
と、そんな中視界の端、路地裏へと逃げ込むように走って行った二つの人影が、葛葉の視界の端に過ったのだ。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
ヤンデレキャラもストーカーキャラも良いですよね……。
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