六話 狂愛と弁当
少し遅くなりました!
「あ、葛葉さん!」
「おはようございます。……緋月様も」
「おっは〜」
リビングに入るとそこには、ダイニングテーブルの上に並べられた出来立ての料理達があった。ソファや暖炉が置かれた所では、律が道具を傍らに広げて――壊れない刀とは言え、手入れをしていた。(家宝であるし)
「今日も来ちった!」
テヘッと緋月は下を出して、飴のキャラのような表情をするのだった。
「律様、もう出来ましたよ」
「あ、はーい」
最後のお皿をテーブルに置き、五十鈴が刀の手入れをしていた律に声を掛ける。律はすぐに返事をしてら、道具を一箇所にかき集めて、駆け足でテーブルの下にやって来る。そして全員が席に着いた。
皆でいただきますと言い、朝食を食べ始めるのだった。
「葛葉さん、今日はクエストやるんですか?」
「ん〜一昨日やったからねー。今日はいいかな……皆んなもゆっくりしたいでしょ?」
ここ約二週間、葛葉達はたまにクエストに出てはこの新居でゆっくり過ごす、と言う日々を繰り返していた。
時に五十鈴と共に買い物へ出かけ、律と共に街を散策したり、鬼丸と共にリビングで日の当たる場所で昼寝をしたりと……。まさにのんびりした日常を送っていた。
のだが、時々その日常を犯す、イレギュラーが来るのだった。それは緋月ではなく……。とその時だった。カンカンと、ドアノッカーの来訪者を知らせる音がリビングに届いたのだ。
「……またかな。食べてていいから」
葛葉が少しうんざりして、席を立ちリビングを出て行き、玄関へと向かう。緋月は朝食を頬張りながらそれを見ていた。が疑問に思い、五十鈴に尋ねることにした。
「誰なんだい?」
「………葛葉様のお友達、になるのでしょうか」
言葉を選びながら答える五十鈴に緋月は疑問を深めるのだった。
再度カンカンとなる扉の前で、葛葉は意を決してドアノブを掴み、扉を開けるのだった。
「……カナデちゃん」
「おはようございます」
扉を開けると、そこには微笑みながら挨拶をして来る――葛葉が助けた少女、カナデが立っていた。手には弁当箱に近い容器を持っており、美味しそうな匂いが漂って来ている。そして両手には、絆創膏みたいなのを着けていた。
「お、おはよう。今日も?」
「はい! 英雄様の為に作って来ました」
そう、カナデはほぼ毎日こうして、自分が作ったご飯を渡しに来るのだ。
「あ、ありがとう……」
「どういたしましてです。英雄様、感想お待ちしていますね!」
弁当箱らしき物を葛葉に渡して、カナデは手を小さく振り屋敷の玄関前から去って行ってしまう。
……どうしてこうなったかと言うと、あの日に出会い次の日にまたすぐに出会ったのだ。
そこから、葛葉はカナデと仲良くなっていったのだ。
そして驚く事にカナデは冒険者になっていたのだ。そんなカナデに、先輩風を吹かしたかった葛葉が色々と教えたりして、感謝の気持ちとして持ってくるようになったのだが。
毎日なのだ、このことが起きるのが。
「……それでも普通に美味しいんだよね」
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
美少女から弁当を貰えるなんて……葛葉はなんで幸せなのでしょうかね〜。羨ましい限りです。
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