十二話 期待のジェットコースター?
今日も少しは早いですね!
そんな事を他所に、緋月は手に持っていた古そうな書物を地面に置いて、書物の表紙を開く。
「これは何をしてるんですか?」
「ん? んーっとね、その人が使えない魔法を何かを媒介にして、その人の魔力を流す事で、使えない魔法を使えるようにする……ん〜言わば儀式みたいな物さ」
説明が難しいのか、緋月は所々詰まらせながらそう葛葉にどうにか説明する。つまりは魔法書みたいな物なのだろうか。
「今から使うのはね、創生魔法っていってね。このボロ屋敷を新たに作り変えるんだよ!」
「……創生」
自分の『創造』のスキルと似た感じなのだろうか、と葛葉は緋月の言葉に若干の引っ掛かりを覚えた。
「その魔法って、使える人は居るんですか?」
「二人だけだね、王都中央図書館の管理人の【賢者】は普通に使ってたはずだよ、媒介無しで」
「……はへぁ〜。ちなみにこの魔法ってどのくらい凄いんですか?」
感嘆の声を漏らして、葛葉は一番気になっていた事を緋月に尋ねる。自分の『創造』と似た魔法である創生魔法。この魔法は上級なのか最上級なのか、不思議でワクワクが止まらなくなってしまう。
「この魔法はね、神話級なんだよ!」
「・・・神話?」
「そう。この世界が創世されたばかり、つまりね! 神様がこの世界を作った頃からある……例えばオーパーツみたいな物なんだよ!」
「・・・・・・」
緋月のまさかの言葉に葛葉は絶句した。
神話級……。上級でも最上位でもない、神話級。ゲームの中でのランク付けでしか聞いたことがない。
もしかしたらと、葛葉は思い付く、自分のスキルは神話級のスキルなのでは⁉︎ と。だが、そこで葛葉はハタと気付く羽目になった。
神話級という、あからさまなチートネームなのに、今までの戦いで大怪我無しで勝って来た試しがない。やっぱりハズレスキルなのか……と落胆していると、視界の端で光が煌々と輝き始めた。
「じゃ、早速やるかな〜」
何処からとも無く風が吹き始め、パラパラと書物のページが捲れていく。光が魔法陣を描き出し、その魔法陣は本へと集約していく。
集約された魔法陣が、光の文字となり書物に刻まれては砕ける様に消えて行った。
「……――っく」
「い、五十鈴?」
と唐突に、一瞬だけ意識を失い、グラッと倒れそうになった五十鈴。すぐさま意識を取り戻し、地面に片手をついて体制を整えた。
「す、すいません」
「ど、どうしたの⁉︎」
葛葉が五十鈴の下に駆け寄り、身体を支えてあげる。五十鈴の顔はかなり悪く、そしてかなり辛そうだった。
「……ぼ、膨大な魔力に……意識が……」
「——ふむ、無理もあるまいのじゃ」
葛葉に伝えようとするも、度々顔を歪めて伝えれない五十鈴。すると後ろから鬼丸が呟きながら近寄って来た。
「あの書物……彼奴の魔力以外にも、周囲の魔力を喰らっておるのじゃ」
「……な、何で?」
「単純じゃ……彼奴の魔力だけでは足りなかったのじゃ」
鬼丸の頬には一雫の汗が伝っていた。そしてそれは、今も魔法を行使している緋月も同様だった。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
葛葉にはチート能力はないですからね! あるとしたら浪漫能力ですね!
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