十一話 小言を言いたかったが
今日はとても早いですね!
「何じゃ……まぁ雑草の妖精は、雑草を放置し過ぎると生まれてくる魔物じゃ。この屋敷は、それほど放置されておった物だと言うことじゃな」
鬼丸の顔が緋月ではなく、後ろにある屋敷へと向けられる。鬼丸の言う事はおおかた間違ってはいない。屋敷の中を探索した葛葉自身、そう思っていた。(雑草の妖精の発生原因は初耳だが)
ボロボロの家屋、何か人では無いモノに引っ掻かれたかのような爪跡。寝室らしき部屋は壁が崩落しており、何かが勢いよく飛び出して行ったかのようだった。
普通なら修理やら何やらが行われるはずだ。それなのに、爪跡も付けられた直後から何も変わっていないようで、崩落した壁も同様だった。
「何があったんじゃろうな〜」
「……」
魔物でも屋敷に侵入してしまったのか。だが、ここはオリアの街で唯一の高所。四方を壁に囲まれており、下からの侵入も容易では無い。というか、こんな所に屋敷を作る意味とは?
「聞きたい事は山ほどあるけど、まぁいっか」
とりあえず今日は休みたいと、葛葉は興味を擽られる心をどうにか鎮めて、緋月が到着するのを待つのだった。暫くして、緋月が屋敷の敷地内に到着すると、開口一番、
「何があったんだい!?」
と衝撃を受けたような、てか衝撃を受けた声で葛葉を見てくるのだった。
指定したとはいえ、鬼丸の魔法は強力が故に指定していないモノにも、少し燃え広がったようだ。屋敷の壁には所々煤が付いており、戦火に燃やされた家みたいな風貌になっていた。
「……雑草の妖精って言う魔物に襲われたんです」
「あ、あ〜……ご、ごめんね」
膨れっ面で葛葉が抗議の目線を緋月に向けると、緋月はバツが悪そうに後頭部を掻いてから、スーッと息を吸って頭を下げるのだった。
緋月も雑草の妖精は知っている。というかこの世界では、家や植物が生える場所には手入れが必須なのだ。しなかった場合は今日みたいなことが起きてしまう。
「律は攻撃受けて気絶しちゃいましたよ?」
「……ありゃりゃ」
「こいうのは前もって言うべきでは?」
「ご、ごもっともです……」
「……?」
葛葉はふと首を捻った。妙に緋月の元気が無いことに。ついさっきまで元気があったのに、今は全くもって元気が無いのだ。何があったのだろうと、そう思うのは必然であり、鬼丸もその違和感に気が付いたようだ。
「緋月さん」
「……ん、な、なんだい?」
「…………さっさと住めるようにして下さい」
「あ、あぁ。ボクにかかれば余裕さ! と言ってもボクは何もしないけどね」
どうにかいつもの調子を取り戻した緋月が、ニコッと作り笑いを浮かべる。その顔を見て葛葉は、胸にズキッと身に覚えがない痛みを感じるのだった。
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そういえば言うのが遅くなりましたが、自分、なろうに投稿した後X(旧Twitter)にそのことを書いた投稿をしてるんですよね〜。結構前から……。
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