十話 気を取り直して
今日はスーパー早いですね!
「――よし、中は大丈夫かな?」
お天道様が真上を通り過ぎた頃、葛葉はボロ屋敷の中から額を拭いながら出てきた。
「お疲れ様です」
外で待機していた――気絶してしまった律の介抱をしていた――五十鈴が、屋敷の玄関口から出て来た葛葉に声を掛けた。中は外のように魔物が現れる事はなく、至って普通の廃墟だった。
「律は大丈夫?」
「はい、まだ意識は回復していませんが。命に別状はありません」
「なら良かった。……鬼丸はどう?」
「わしか? 大丈夫じゃぞ?」
葛葉の隣で会話を見守っていた鬼丸に、葛葉が唐突にそう尋ねる。先ほど、かなり落ち込んでいた為、葛葉は気を遣っているのだ。
だがその心配は要らないようだ。
屋敷の探索で葛葉は一階、鬼丸は二階を担当した。この前のダンジョン探索と比べれば、何ともまぁ楽な探索だったことか。
「とにかく、頼まれてたのは終わったね」
「色々あったがのう」
「……それはあとで文句を言っておこっと」
雑草のことなんか一ミリも聞いていかったのだ。それで律が気絶して、葛葉がお腹を貫通させられる重傷を負ってしまったのだ、少しは小言を言われても仕方あるまい?
「――おーい! 葛っちゃぁ〜ん‼︎」
と聞こえてくるのは、お小言を言われるのが決定された人物である緋月の声だった。その声の方向に目を向けてみると、にははと超スーパー満面な笑みで、手を精一杯に振る緋月が屋敷の敷地内からでも見えたのだった。
「ほほう、自らお小言を言われに来よったのう!」
「……ん〜でも多分、あの感じは知ってなかったんじゃ無い?」
顎を擦り擦りしながら鬼丸が、目をキラキラと光らせる。しめしめと言った悪どい表情を浮かべてる横で、葛葉が少し悪い目付きを更に悪くして、緋月の浮かべる表情をマジマジと見る。
どうやらその曇りなき笑顔に隠し事はなそさうだ。あの笑顔は多分、ただただ葛葉に会えるのを楽しみにしていた、といった笑顔だろう。
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昨日と一昨日は少し暗めで、何かありそうな話でしたが、題名通り気を取り直しましょう!
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