九話 病
まだ出て来てませんが、この世界にはもっとヤバい病気があるんでしょうね!
「——悪魔憑き……極めて少ない可能性でしか発症しない、稀な病気」
と二人のしんみりとした場に、足音を鳴らし、何事かを呟きながら部屋に入って来たのは、葉加瀬だった。女性は、にぱぁっと嬉しそうに笑顔を咲かせた。
「エクシアの言う通り、どうしようもないことだ」
この理不尽で世知辛い世界には、様々な病がある。中には掛かったら最後、死んでしまう場合や後の人生に多大なる障害をもたらすものがある。
その中で一際騒がられたのは、『眠り姫』と言う病気だった。感染すると、二度と目を覚まさなくなりそのまま衰弱死すると言った、優しいようで優しくない病気だ。未だに感染源も原因も、治療法も分かっていない病気だ。
「でも、最善の方法があったはず!」
「無いんだよ」
そして『悪魔憑き』とは、患った者を問答無用で悪魔にしてしまう、そんな病気だった。
悪魔憑きという病気は眠り姫ほど、症例が無く治せる者も治せる魔法も存在しない。
悪魔憑きを発症すると、一時的に悪魔となるのがこの病気だ。個人差もあるが、悪魔となる者の中には高レベル悪魔になる者も存在する。そして何を隠そう、エクシアは悪魔憑きに感染しているのだ。
「【賢者】ですらお手上げの病気だ。……私達だけでどうにかなるものじゃ無い」
「分かってるけど、分かってるんだけど。でも、それでも……このままなんて」
悪魔憑きの厄介な所は、放っていても悪魔になる所だ。故に発症した場合はその場で討伐対象となるのだ、今こうして話せてる状態でもおかしいのにだ。今のエクシアは力を封印されているようなものだ。
正確には、身体の内の内から溢れ出す魔力を際限なく吸っているからだ。しかもこの街の、魔力式街灯の九割がそれで補わられているのだ。
それに、今はもう討伐済みとなっているが、エクシアが悪魔になった時の推定レベルは8となっている。葉加瀬と同等のレベルだ。
「……緋月、君は一度葛葉ちゃんの下に行ってくると良い。あの書物を持ってね」
「う、うん」
渋々緋月は頷き、部屋の出口に向かって歩き出す。そして緋月が出て行った後、数分して、
「あの子、変わった?」
「変わったよ」
「……やっぱり。昔はあんなに余裕、持ってなかったのに……」
「あの時は、仕方ないさ。……何もかも失った後だったんだから」
そう、八重樫緋月は五年前に全てを失った。
そして今は、沢山の物が緋月の下に寄って来たのだ。それを緋月は、大切にするだろう。掬い取った手から零れ落ちないよう。自分を犠牲にして、心を犠牲にしてでも。
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