七話 油断はやっぱ禁物やね
遅くなりました!
「葛葉!」
「葛葉様‼︎ ……くっ!」
貫かれた腹部からは血が滝のように流れ出ている。想像で治そうにも、この根っこが刺さってしまっていては意味がない。このままでは葛葉は大量出血で死に至る。
鬼丸が火の火力を上げるが、根っこの力が揺らぐ気配もなく、逆に力がました気がした。
「ぐっ! ぁあああ‼︎」
痛い、痛過ぎる。今までこんなにも痛い思いをした事があったろうか。葛葉の痛々しい叫びに呼応するように、鬼丸の魔法の火力が一気に弱まった。そして同時に根っこの力も少し弱まった。
「う、ぁう。うぅ」
葛葉は息も途切れ途切れになり、ただ苦痛に表情を歪めて唸っていると、盾を持った五十鈴が雑草の背後から姿を現して、殺気の籠った目で雑草へ襲い掛かる。跳躍し、屋敷の壁を一時的に地面にし、全力で壁を蹴った。
「――葛葉様からっ‼︎ 離れろッ‼︎」
弾丸のような速度で、五十鈴は雑草の核部分に盾を刺しこんだ。十字の盾の縁は鋭利で、ワイバーンの皮膚にも傷を入れれる鋭さだ。故に茎が身体の雑草達は、この盾の攻撃は防ぐ事が出来ない。
そして、核に刺さった盾を縦の向きから横の向きへと変えると、五十鈴は一気に斬り払った。
「……うぅ」
「葛葉様!」
地面から三メートル程離れた高所で吊るされていた葛葉を、五十鈴は急いで下に潜り込みキャッチした。
奇しくもそのキャッチの体制は、お姫様抱っこだった。
「葛葉様、これをっ!」
五十鈴は自分の戦闘服のポケットから緑の液体――回復液のポーションを取り出し、葛葉へ手渡した。痛みに堪えながら葛葉は、受け取ったポーションのコルクを親指で開け、ゴクゴクと一気に飲み干した。
「ご、ごめん。油断した……」
「大丈夫ですよ。私は、葛葉様が無事なら……!」
安堵し、五十鈴は葛葉に微笑みかけながらそう言った。大きな怪我は大体回復でき、後は想像で回復させれば余裕で治る傷だ。いつもよりも、痛かったが……いや、いつも痛くないと感じてる時点でヤバいのか。
「……五十鈴、律のことお願い」
「はい、分かりました」
葛葉は、今も壁尻状態で気絶している律を指し、五十鈴に介抱させようとする。かなりのスピードで吹っ飛んだのだがら、そうそう起きないだろう。五十鈴が律に、駆け寄っていく後ろ姿を眺めていると、隣に鬼丸が並び立った。
「……すまぬのじゃ。わしがもっとちゃんとしていれば、こうはならなかったのじゃが……」
「……? 何が?」
唐突な謝罪の次には、鬼丸が顔を俯かせて悔しそうにそう言ってきた。
「わしが戦えば、傷付かないで済んだのじゃ」
「別にいいよ、私の戦い方はいつもこんな感じだしさ。今更だよ」
鬼丸の頭に手を乗せて、葛葉は優しく撫で始める。鬼丸がそれに驚き、顔を上げると、葛葉が鬼丸に向け優しく微笑んだ。
「……そうじゃな。じゃが、戦い方は改善した方が良いのう〜」
「うっ!」
フッと鬼丸も微笑み、そう苦言を言ってやった。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
鬼丸も真面目なところはあるんですよ!
面白いと思って頂けたら、ブックマークと評価をお願いします‼︎