四話 まさかのまさか
はてさて何が起きるんでしょうか?
ボロボロの廃墟と化した屋敷。門から玄関まで続く道は、雑草によって足の踏み場も無く、素足で歩いたら傷だらけになりそうなほどだった。
「これは……酷いですね」
「住めるようにって、どうするんじゃろうなぁ?」
葛葉に次いで、五十鈴と律が入り鬼丸は欠伸をしながら屋敷を見上げる。住めるようにすると、緋月は間接的にだが断言していた。なら住めるようになるんだろうが、今の屋敷を見ていると到底そうは思えない。
「とりあえず雑草をどうにかしないとね」
生え散らかし放題の雑草に目をやりながら、葛葉は無いはずの袖を捲る。五十鈴がガサガサと荷物から何かを取り出そうとし、律が鞘から刀を抜き陽光を反射させる。鬼丸は相変わらず欠伸をして、屋敷を囲う塀にもたれ掛かっている。
葛葉も鋭利なナイフを創造した。
「のうのう、そんな事せんでも。わしの魔法で良いとはないかのう?」
塀にもたれ掛かって居た鬼丸が葛葉達に声を掛ける。掛けられた葛葉達は鬼丸へ振り向く、と同時に鬼丸は手を突き出し唱えた。
「『燎原之火』」
そして間髪を入れずに――後一歩で葛葉が死にそうになった――魔法を行使した。それは指定した場所、範囲にあるモノを問答無用で焼き尽くす炎の魔法だ。しかも指定した場所、範囲とモノ以外は燃えもしないのだ。
「……う〜わ」
「す、凄まじいですね……」
「暑い」
葛葉があの時の記憶を思い出して青ざめ、律は一斉に燃え上がる雑草に驚き、五十鈴がボソッと愚痴を呟く。屋敷の塀の範囲と雑草を指定したのだろう、見事に雑草と屋敷の敷地内だけが燃えている。
「ほれ、これで終わりじゃ……」
鬼丸が焼け野原になった敷地内を見ながら呟き掛けると、同時にドサドサと地面の中から雑草が再び生え始めたのだった。焼け野原だった敷地内は、今はもうジャングルと化していた。
「え? 何これ」
「…………この現象は」
確かに燃えたはずの雑草が、一瞬にして生えて来るという謎現象。葛葉が困惑の声を上げるが、五十鈴は何か思い当たる節があるのか荷物をまた漁り出した。
「わわわ。ま、まずいですよ⁉︎」
生えて来る雑草がニョロニョロうねりながら、屋敷の一階分ほどの大きさまで成長する。地面からは雑草の根も這い出て来ており、鞭のようにしなやかに振り回している。
「き、キモっ‼︎」
這い出て来て移動し始める雑草達。その光景は正に、キモいという言葉を体現しているのかのようだった。
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雑草の妖精っていう意味の分からない魔物ですね。
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