三話 紹介されたのは……?
果たしていいお家が手に入るのでしょうか?
「…………さってと、ボケはこんぐらいで」
「かなりセクハラしてましたよね」
「フッフッフ、葛っちゃん。この世界に労基はないんだよ?」
「誇ることじゃ無いんですよ?」
葛葉の胸を揉みお尻も触り、律の豊満な胸に顔を埋めて全身を弄った緋月は律から手を離し、ふぅと息を整え、仕事を終わらせたぞというような顔をする。そんな緋月に、一応は部下に当たる葛葉と律にした行いを咎めようとするが、勿論異世界に労基という生々しいのは無く……。ドヤッ! という顔が大変ムカつくだけだった。
「そんで、家が欲しいんだっけ?」
「……は、はい」
「……ふむふむ。家か、ちなみにどんな家だい?」
「えーっと四人が暮らせて一人一人、個々の部屋があって、荷物を置く部屋もあると良いんですけど……」
貪欲と言われても仕方がない。仕方がないが、プライベートの空間は必要だろう、それにクエスト行かない日は皆んなで使う道具類はかなり邪魔になる。だからこんなにも欲張りな家が欲しくなってしまうのだ。
「なるほどなるほど……。ふふふ、葛っちゃん、良い家があるよ」
「へ?」
顎に手を当てて思案していた緋月が、真っ直ぐと葛葉を見つめてそう言って来た。まさかの返事に葛葉は目を点にして、首を傾げるのだった――。
――翌日――
「――ここがお目当ての物件だよ!」
『……』
葛葉達が向かったのは、ギルドからかなり歩いた丘の上に聳え立つお屋敷だった。
「元々はここの領主が使ってたんだけどね! 中央集権化? とか何とかのせいで、ここの領主は王都で暮らすことになったんだよ」
「……」
「だから使われなくなったんだけどね〜、ずっと壊されてないんだ。壊すのにも金が掛るんだって、だから長年放置されてたんだよね〜!」
「緋月さん」
「ん? なになに、どうしたの?」
葛葉は、連れられて来て紹介された家がお屋敷だったと言うのも驚愕だったが、それ以前に葛葉達を絶句させる事があった。それは、目の前にあるお屋敷がボッロボロの廃墟と化していたからだ。
「こんなのに住めるわけ無いでしょ⁉︎」
元は立派なお屋敷だったのだろうが、今は蔦で壁が覆い尽くされ白い木材は苔に侵食されていた。窓ガラスは全て割れており、地面に散乱している。そして地面も手入れされなくなった為、雑草が生え散らかしており土すらも見えない程だった。他にも挙げればキリがないが、まぁとにかく廃墟だった。
「あ、あはは〜この街で葛っちゃんの要望に合って、誰も住んでいる家はここしかなかったんだよね〜」
「いや、どう見たって住めませんよね⁉︎ ……い、良いですよ、そんな無茶に探さなくても。あの部屋でも良いんですから」
「いや! 葛っちゃんのためだもんね!」
謎の使命感と気力を湧かせて、緋月は葛葉の手を取る。
「それに、この雑草と屋敷の中の探索をしてくれたら、後はボクが何とかするからさ」
「……探索ですか」
探索。あまり良い覚えがないフレーズだ。
葛葉はついこの間――一日前に大勢のスライムにメチャクチャにされたダンジョン探索が思い起こされたのだ――トラウマを植え付けられたのだから。
「なぁに、安心したまえよ。ここは街の中だからね。魔獣も居ないし、危ないものもないからさ」
「……探索と雑草の処理をしたら、住めるようになるんですか?」
「あぁ、男に二言は無いさ!」
「女ですけどね」
えっへんと小さい胸を張りトンと叩く緋月。
何の根拠があって、あんなに自信満々なのか気になるが、とりあえずは住める事が知れただけでも十分だ。
「……それじゃ始めますか」
深呼吸をしてから葛葉は屋敷の敷地に入っていくのだった。
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お屋敷……何処かのアニメを思い出しますね〜。いや、大体のなろう系異世界物は屋敷ですもんね、暮らすところ。なら、別にいいっか!
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