十九話 表と裏、太陽と月、近くと遠く
題名、変ですね……。語彙力なくてすいません!
その驚きように、声を掛けた羽衣はパチパチと瞬きしてからクスッと笑みを漏らし、ごめんごめんと平謝りをする。
「そんな、驚かれるとはね」
「び、びっくりは苦手なんですよ」
「あーそうなんだ。ごめんね」
頰を掻き反省しているような顔で葛葉を見やる羽衣。自身の体を抱き締めるように両肩を掴んでいた葛葉は、羽衣の表情を見て、強張ってしまった表情を緩めるのだった。
「そ、それで何ですか?」
「あぁそうだそうだ。……名前で呼んで良いかな?」
「良いですよ」
「ありがと。それでね、私が話したかったのはね……葛葉ちゃんが例の【英雄】なのかな?」
「……そ、そうですよ」
葛葉の隣に座りニコニコと常に笑顔で話し掛けてくる羽衣。
「わ〜本物だ。……ね、握手してもらって良い?」
「え? ……こんな私にですか?」
「良いの良いの。いつかすごい【英雄】になった時に、周りに自慢できるからね」
「は、はぁ」
よく分からない人だな、と葛葉は手を差し伸べてくる羽衣を見てそう思った。まるで裏が見えない。こんな事を頼んでくるのだから、何か考えがあるのではとそんな考えが脳裏を過ったが、何も分からない。
この小比類巻羽衣が考えていることが。
「……ふふ。ありがと、それじゃ」
葛葉が手を握り返し、握手を交わすと羽衣は嬉しそうに微笑み立ち上がった。
(……でっか)
ふと葛葉は、立ち上がった羽衣を見て心の中でそう呟いた。
(身長でか、あと胸も……)
推定170以上だろうか、そしてGくらいだろうか。身長も大きければ胸も大きい、完全なモデルさんだ。胸はいいとして、身長がデカいのは羨ましい。
「それじゃ、またいつか会おうね」
「は、はい」
そう言いながら扉の方へと去っていく。
そしてガラガラと扉を開け、振り返り羽衣は微笑みを絶やさないで、葛葉の事を見るのだった――。
「――……よし。これで、余裕を持てるかな」
浴場と脱衣所を隔てる扉を背もたれにして、寄り掛かり、先ほど握手した手を見つめながら、羽衣はボソッと呟いた。
「あの子も、きっと参加するだろうし」
緋月が言っていた通り、あの葛葉という【英雄】はきっと奴隷商を許しはしないだろう、あの一時で分かったのだ。
「楽しみだなぁ」
羽衣はそう呟きを残し、自分の替えの服が置いてある場所へ向かうのだった。
「……ほう。これが次代の【英雄】か」
淡い紫に満ちた大きな一室。その中央に造られている豪華なデザインの椅子は、魔王が座っていそうだ。
事実、座っていた。
「妾が見てきた中でも、"一番"弱そうだな」
水晶をみるその目は酷く冷たかった。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
ついに魔王までが登場しましたね! まだ三部な筈なんですが……。で、ですがまぁ、次に登場するのはもっと先になる筈です!
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