十四話 高レベル冒険者
戦力の補充が十分になって来ましたね!
「――ケッ、ンダよこのシケタ部屋はよぉ」
がなり声を上げ、ローテーブルにガンッ! とかなりの力で蹴りを入れる青髪の青年。その行動にソファーの後ろに控える、ギルド職員達がビクッと肩を跳ねさせた。
「やめるんだ、ガル」
「あぁ? ンダテメェ、俺の母親気取りか?」
「……君の母親なんて、私から願い下げだけど」
気性の荒そうな青年の行動に、三人が座れるソファーで青年の隣に座っていた、バイオのハンクの装備っぽくガスマスクを装着した人物が肩を竦めながらせ諌める。
「……はぁ。やめたら、人が見てんだから」
そしてその横から口を挟むのは、黄色と茶色のツートンカラーの髪に、シスターの服を着て脚を組み煙草を吸う女性。
シスターだと言うのに、煙草を吸うと言う……何というか生臭さ。
「黙れやアバズレ」
「あ? …………なんか言った? 野党」
「あぁ?」
ガスマスクの人物を挟んで睨み合う二人。一触即発の中、ボソッとシスターの女性が放った一言に、青年が反応してしまった。
「テメェ、今何つった……? もういっぺん言ってみろや‼︎」
「何度でも言ってあげるよ! 野党!」
「表出ろや! その顔、二度と外で歩けねぇようにしてやらァ‼︎」
「上等、やってみろよ。あんたの攻撃は弱過ぎるから、初級回復魔法で簡単に治んだよ」
二人は声を荒げ、互いを互いに罵り合う。もはや聖職者である女性は、ただのチンピラ女にしか映らない。
そして、それをただ茫然と眺める緋月と葉加瀬の身からすれば、チンピラカップルが喧嘩してるようなものだ。
「……はぁ。二人とも、『静かにしなさい』」
「……チッ」
「……はぁ」
ガスマスクの人物がため息を吐き、立ち上がり罵り合う二人に、命令口調で少し強めに、止めるように言う。すると二人は沈黙し、青年は舌打ちをしてソファーに座り、女性もソファーに座り脚を組ませて煙草を吸うのだった。
「……さて、すいません。連れが、お見苦しいところを見せしました」
「……い、いえ」
葉加瀬はいつも通りの眠たそうな顔で、緋月は口角を引き攣り汗を一雫流しながら相槌を打つ。
「自己紹介がまだでしたね。……私は、このパーティーのリーダーを担っている者です。二つ名は【武器屋】です。それで、本名が小比類巻羽衣と申します」
礼儀正しく、自己紹介をするガスマスクの人物。それよりも、緋月は一つ驚いたことがあった。
「【武器屋】ってあの【武器屋】かい?」
「はい、結構有名ですかね?」
「そりゃそうさ……たった僅か二ヶ月で、Lv.5になった新進気鋭の超大物新人って噂されてたんだから」
それも三年も前の話になるが。その話は事実であり、聞いたことがない者は居ないとされている。
「……で、こっちのが――」
「――ガルンディアだ」
「だそう。んでもって、この娘が――」
「――カミラ」
羽衣の紹介を遮り、二人は自分の名を自分で言う。その丸っきりおんなじ行動に、羽衣は二人を交互に見て何か得心した。羽衣は俯かさせた顔を上げて、二人を見てから、
「この二人は仲が良いんだよね」
「「良くねーよ‼︎」」
節穴としか言いようの無い言葉を放った。
その言葉に一瞬の間も開けずに、二人はダンとローテーブルに手を突き立ち上がり、羽衣のことを睨みながら声を荒げるのだった。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
戦力は十分過ぎますかね……。
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