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三話 異世界での自主学習!2

やっと世界の設定が公開された。……あれっ! 遅くね?

――二時間後――


「……ふぅ久々の読書だった」


一通り読み終わった葛葉は立ち上がると同時に、ピキッ! と足に走った痺れに倒れそうになってしまう。なぜなら二時間も正座して読んでいたからだ。


「でも大体は分かったな」


読んだ本の内容を断片的に言うとすると、重要な事は三つか四つあった。

まずこの世界、この世界はどうやら一千年前から始まった絶滅戦争中と言う事。その割には豊かな生活を送れているのは……今は停戦中だからだそうだ。

今から七十年前に停戦してからずっと平穏な日々が続いている。が、近年この世界の人類が戦っている相手――魔王軍が怪しい動きをしていると言う事。

そして、もうそろそろ勇者を五十年に一回に決める、国を挙げての祭り事があるらしい。


「行ってみたいな……」


昔の思い出が蘇る。妹と自分、二人で仲良く回った祭りの情景が思い起こさせれる。妹の手を引き、人の波を掻き分け、何個もの屋台を回った夏祭りが。


「あとは……」


この世界の絶滅戦争の始まりの原因と戦いの詳しい事。絶滅戦争が始まった原因は、巫女の誕生と龍の存在だった。一千年前からずっといる神龍達による人や魔族、多種多様な種族に災害をもたらしたのだ。その時に、当時最強と謳われていた帝国が王国へと攻め込んだのだ。

その時の戦火が他の国、種族へと伝播し戦争が始まった。と同時に生まれてきた、神に祝福された少女――所謂巫女達が現れたのだ。

最初は王国、その次は亜人種から魔族達の下に生まれてきたのだ。今でもその巫女達の系譜は継がれている。

巫女の中にも封印されて、ずっと目覚めていない巫女もいるらしい。

代表的なのが鬼族の巫女だった。

今から五百年前の戦争に敗れ、鬼族の巫女は強大すぎる力ゆえ誰の手にも負えず、封印された。

その後鬼族は戦争には参加せず、各地に散らばり里を作り暮らしている。他の巫女達も封印か、殺されたか、今も生きているかの三択だ。


「何処の世界でも……やっぱ戦争ってのは良くねぇな」


胸糞が悪い。対話が出来るのに、何故か暴力で訴えかけてくる。人や知性のある者の弱い所だ。


「そして……」


教本に載ってあった【邪龍】これがこの世界の根幹らしい。その名の通り邪悪な龍だ、教本にはこう書かれていた。


「『邪龍、再び蘇るとき、それは終焉の日。同時に人々は、天の使いを見るだろう。それは希望の光か、それとも絶望の光か……龍が鳴く日、我等は小さな悪意と星によって滅びるだろう』か」


教本に載っている古代の預言の石板。そこにはそう書かれていた。気になるのは最後の一文『我らは小さな悪意と巨星によって滅びるだろう』この一文が気になる。

小さな悪意とは? 巨星とは? 謎だ。その前の記述はありそうな話だから分かりやすい。

邪龍が何から――どうせ封印とかから復活して――暴れ回るんだろう。そして、天の使い。これは救世主だとか勇者とかを指してるだろうし。

絶望の光は救世主か勇者のどっちかが一回やられんだろ。典型過ぎて先読みがしやすいわ。

これが小説だったら及第点にも届かないぞ?


「だけどまぁ、やる事は一つか。……この世界で、俺は成り上がる。そうしないと駄目そうだな」


この世界で強くなければ死あるのみだ。

弱さが罪なんだ。弱い奴は生きる価値すらない。この世界は弱肉強食を体現したような世界だ。今の葛葉にはハード過ぎる。チート能力なんてない、凡人よりも優れた力なんて無い。無い無い尽くしもいい所だ。

なら、強くなりゃいい。簡単な話だ。


「……うし、今日からやるか」


自分が読んでいた本をちゃんと棚に戻し、葛葉は決意に満ちた表情を浮かべ歩き出す。明日への、希望への道を確実に、一歩一歩足を踏み出す。本屋から出ようとドアノブの取っ手に手を掛けようとした。その時、葛葉の視界に入った物。


「……新聞か?」


そう、新聞だった。とは言え、元の世界にあるような新聞ではない。紙は荒いし、所々汚れや傷が付いている。だがこれにはどんな教本、どんな歴史書にも、今の葛葉にとってそれらより価値がある物だ。

ふと、値段を見ると……百二十フェル。


「日本円で百二十円だよな」


余裕で買えるな。と札束だらけの財布を開き、ふすん! と誰も居ないのにドヤる葛葉。居るのはさっきの少女だが、まだ窓の外を見ている。

不思議に思いつつも、新聞紙を持ちカウンターに向かう。


「すいません」

「……あ、どうかしました?」


葛葉が声を掛けて数秒、遅れて返事をする少女。ぼーっとし過ぎやろ、と葛葉は内心思う。こんな路地の奥の奥に、何かあるのだろうか。


「これを買いたいんですけどー」

「あーはい、百二十フェルね」

「これで……」


葛葉が出したのは千フェル札。日本円では千円の札だ。正直、百二十フェルに千フェル出すのは嫌がらせの域だが……これしか無いのだ。


「えーお釣りの八百八十円になります」


りょ、良心が痛む。今さっきの、え? これ出すの? って言う表情が怖い!

鈍痛のように痛む胸を握りしめ、会計を終わらせた葛葉は本屋を後にした。

ドアベルの鳴る音が響く店内で少女――麻乃結城は新聞を買って行った少女を思い出して、


「そっくり」


と自然とそう呟いた。

読んでいただき、ありがとうございます!

世界の設定をご理解いただけたら、作者として嬉しいです!

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