九話 再会
今日はすっごい早めです!
鬼丸がはしゃぐのをやめ、葛葉がナイフを生成させ警戒する。だが、大扉の動きは先ほどとは全く違い、開くのがかなり遅かった。
「……?」
「葛葉よ、警戒しなくて良いのじゃ。魔獣じゃないからのう」
呑気に大扉を見て警戒する葛葉を宥める鬼丸。ズズズと人が入れる大きさになると、その隙間から人が入って来たのだった。
「やっ、やっとでずぅぅぅ‼︎」
入って来た人物は膝から倒れ込み、涙を流しながら叫ぶのだった。……というか、この声って。
「り、律ー?」
「…………ぇ? ――っ! ぐずばざ〜ん‼︎」
聞き覚えのある声に、葛葉がその声の人物の名を呼ぶと、ずびっと鼻水を啜り暫くしてから葛葉の名を呼び返す、律の声が聞こえて来た。わんわん泣きながら、葛葉の方へ走ってくる律に、葛葉は何があったんだと困惑する。
そして律は、葛葉の下に来ると同時に葛葉の胸の中に飛び込んだ。そこで葛葉は、はたと気付いた。律の戦闘服が修復されていっていることに。
「り、律? 何があったの?」
「う、うぅ。ぞれが……ぐず、うぅ」
律は嗚咽しながら、どうにかこうにか話そうとするも喉に言葉が引っ掛かり何も言えなくなってしまう。
葛葉は優しく律の背中を叩きながら、律の気持ちを落ち着かせていると、スタッと葛葉の横に何者かが立った気配がした。
「――っ。……なんだ、五十鈴か〜」
「すいません。遅くなりました」
所々服はボロボロだが目立った外傷はなく、律みたいにギャン泣きして居ない五十鈴が、そこには居た。
「大丈夫だよ。……んで、どうかしたの?」
「それが……葛葉様と逸れた後、私達は先に進んだんですが」
未だ泣いている律を一瞥して、五十鈴は言いにくそうに言葉を選びながら出来事を伝えようとする。
「何階層かは無事に踏破していたのですが……ここより一階層上で、スライムのコロニーに入ってしまって……」
「……うぁ〜」
葛葉は容易に予想できた。先ほどスライムに身体だけを犯されたのだから。一体でだ、それなのにコロニーとは。
「律様は足を取られてしまって、そのまま私がある程度スライムを倒してる間は……」
「なるほどね……で、貞操は大丈夫そ?」
「はい、後一歩で手遅れになる前に助け出せましたので」
「そうなら良かった」
頭を撫でながら葛葉は律を慰める。律の気持ちは痛いほどわかる。だが、葛葉はそんなに長くは無かった。
「律、怖かったね」
「ふぁ、ふぁいぃぃぃぃぃ‼︎」
また再び大粒の涙を溢しながら律は葛葉を強く抱きしめた。最近は何故か抱き付かれる事が多い気がする。というか妹が多い気がする。
「五十鈴よ、その小娘が泣き止むまでは、わしらで偵察しに行くのじゃ」
「はい、わかりました」
泣き喚き葛葉に優しく接してもらっている律を一瞥してから、鬼丸は口角をピクつかせて五十鈴に声をかける。
この先はきっとボス部屋だ。鬼丸が先に一度全ての階層を踏破して、この後ろの大扉から先以外は何もない事を知っている。この先のボスはどんな敵か見に行きたいという感情もあるのだった。
「……よしよし」
「うぅぅぅ……ありがどゔございばず」
優しい表情で律をあやす姿は、聖母か女神かに見え……いや、【英雄】の様に見えた。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
律は一体どんなふうにやられたんでしょうかね〜。気になりますね〜。ですが、律のためにも、ここから先は皆様のご想像にお任せします。
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