十九話 憧れを持つ者
衝撃の真実が明かされます!?
「『聖勇剣‼︎』」
その叫びと共に、夜空に立ち上る一筋の眩い光。天を穿たんとする光は、十数秒光り輝き続けた。山々が連なり、魔獣が我が物顔で跋扈する危険領域、魔族領。そんな地にて、青年は魔獣を狩っていた。
「ふぅ……一区切りついたかな?」
周りは魔獣の死骸が転がっており、どんな激しい戦いが起こったのかを容易に想像出来てしまう。だがそれよりも何よりも、目が寄せられる物が青年の直ぐ前にある、そしてそれはどっからどう見てもドラゴンの死体だった、
「魔竜の討伐完了っと……。あ、ムギ達が居ない……」
魔竜と呼ばれたのは先ほどまで生きていたドラゴンだ。全身を漆黒の鱗に守られており、鋭利で無数にある歯は人を容易く引き裂くだろう。
巨大過ぎる体躯に、船の帆のような翼。どれをとっても規格外だ。そんな魔獣を倒したと言うのに、青年は喜びもせず、ただ先ほどまで一緒にいた仲間達の影を探すのだった。
「【勇者】殿ーー‼︎」
「おーい!」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
しばらく辺りを見回していると、遠くから青年を呼ぶ声が響いて来たのだ。少女の声が二つに、太い男性の声が一つ。青年の仲間達であった。
「あ! 皆んな‼︎」
まだかなり遠くにいる仲間達に手を振り、ここに居るぞと合図をした。最後尾をフラフラと歩く猫の獣人がそれに気付くと、ビュンとヘトヘトだった筈なのに、物凄い速さで走って来た。
「あれほど逸れないでくださいって言ったばっかじゃ無いですかぁ‼︎」
「ご、ごめんごめん」
詰め寄りキツめにそう言ってくるのは、猫の獣人であり青年の仲間である、ムギだ。これでも第一級魔道士検定に満点で合格している天才だ。
「……って、魔竜倒したんですか」
「ん? あぁ、一応ね」
横で倒れてる死体を一瞥し、またナズは青年にキッと鋭い目を向けて、猫なのに犬のようにグルルと歯軋りをしだす。
「これこれ、【勇者】殿もお疲れだろう? 痴話喧嘩はよすんだ」
「ち、痴話喧嘩っ⁉︎ ……そ、そんな別に、そんなことは……、それに私は痴話喧嘩するほど」
「はぁ〜バカ猫、速く戻ってこーい」
そして他二人も青年の下に集まってき全員揃う。この物達は、国王が正式に認めた、勇者御一行であった。【勇者】に魔導士、僧侶に戦士と定番の中のド定番だ。
「さ、速く戻ろうか」
「ですな!」
「おぉ〜怪我してねぇか?」
「あぁ、うん。大丈夫」
「なら良いが……ん? どうしたバカ猫?」
三人が歩き出すがムギは止まったままだった。男が振り返りナズに目を向けながらそう言うと、ナズは頭を振って杖を抱えて走り出す。見てるだけでもヒヤヒヤするような走りで。
「何でも無いです! 行きましょう、ラグス様‼︎」
今代の【勇者】は選抜を余裕で勝ち抜いた強者の中の強者。何故か、それは誰よりも【英雄】に憧れ、そして憧れの人物の横に堂々と並び立てるようになるためだからだ。
そのためには、勇者にでも何でもなってみせたのだ、【戦帝】と【英雄】の弟子、ラグス・ノーベックは。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
なんとなんと、ラグスは勇者になっていましたね! いやぁ〜びっくりですね!
この後の物語にもちょくちょく出てくると思いますが、大々的にはまだまだ先になりますね!
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