十六話 封印しちゃえ!
しませんけどね
「「……これは」」
あまりの衝撃的な光景に、食堂にやってきた葉加瀬と葛葉が同時に呟き、ハモってしまった。男性冒険者達が山積みになって気絶しており、その上の頂きで酒を飲む鬼丸が居た。それ以外にも、律がダイイングメッセージを残して倒れていた。
「く、葛葉様」
「あ、五十鈴……。何これ?」
「……実は」
男性冒険者と女性冒険者達を、介抱していた五十鈴が葛葉の傍へ寄ってきて申し訳なさそうな顔で、葛葉達が風呂に入っていた間の出来事を話し出した。
葛葉が風呂に入りに食堂を後にして直ぐに、鬼丸が律を捕まえ飲み比べ勝負をし出したのだ。それからは次々に冒険者達が鬼丸に立ち向かいに行った。だがどの人物も鬼丸には勝てず、終いには飲んでいる途中に泡を吹いて倒れた者も居たらしい。
「という事なんです」
「…………葉加瀬さん」
「どうしたんだい?」
「鬼丸のこと封印しちゃいましょうか?」
「もう少し考えたまえよ」
迷惑しか掛けない鬼丸に、とうとう葛葉の堪忍袋の緒が切れてしまったらしい。ゴクゴクと呑気に酒を飲む鬼丸を指し、虚な目でニッコリと笑顔で葉加瀬に提案するのだった。
「……だが。これは飲む時間はなさそうだね」
「そんなぁ〜」
まだ一杯くらいしか飲んでいないのだ。それなのに飲めなくなるとは、余りにもあんまりでは無いか?
「仕方ないさ。さて……冒険者達は寝かせておこうか。後でギルド職員に片付けを頼むとしよう」
「ありがとうございます」
五十鈴が、元凶の代わりに頭を下げて礼を言っている間に葛葉はため息を吐いて、鬼丸の下へ歩いていくのだった。
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鬼丸を封印しちゃったらこの先詰みますからね、しませんよ。
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