十四話 運命
今思えば、お風呂シーン多いな!
ブルルと途端に悪寒がしてきて、葛葉はお湯に口元まで浸かった。
「さて、鬼丸の調子はどうかな?」
「……何と言えばいいんですかね〜。まぁ、普通ですよ」
「なら良かった。……本来なら、君に預けるのではなく。国が保護をし、再封印の準備を進めるはずなのだが」
異例中の異例だと、葉加瀬は最後にそう付け加えた。それもそのはずだろう。鬼丸は鬼族の巫女、一国を滅ぼせる力を持ったヤバすぎる幼女だ。
「再封印……」
「あぁ。私達のような矮小な人間に、巫女という超次元の彼女達を操る術は無いからね」
「……それでも、封印なんて」
葛葉は封印をよく思っていないのだ。鬼丸のような、無邪気な少女を身動き取れない状態にするなんて。
「……あぁ、私もそう思うよ。どんなに相手が強いから、操れないから、怖いから身動きを取れなくさせる。……だなんてね」
「……どうにか出来ないんですか」
「残念ながら……ね。葛葉ちゃんも、痛いほど経験しただろうけど……」
バシャとお湯の中から葉加瀬は手を出して、大浴場の天井に伸ばす――いや天井のその先、空よりも上の宇宙でも無い場所に。葉加瀬は一拍置き、静かな声で葛葉に向かって言った。
「この世界は、とてつもなく理不尽で世知辛いんだ。……ご都合主義は無く、【英雄】だろうが【勇者】であろうが、転生者であろうが……。この世界は等しく、それらに牙を向けてくるんだよ」
そうだ。今まで、この世界にやってきて、何回何十回も経験した。圧倒的なまでの理不尽に、屈強な男でも音を上げそうな世知辛さ。何度死にそうになったことか。
「……生き残る為には、他者を蹴落とす必要があるのが、人っていう種族の運命さ」
この世界で暮らして、こんなにも繁栄させることができたのは、その繰り返しだったのだろう。
他種族に住処を奪われない為にも、仲間内で殺し合いが起きようとも厭わずに、大多数を救い少数を抹殺する。……トカゲの尻尾切りと何ら変わりはしない。
「葛葉ちゃん。……君がこれから歩もうとしているのは茨の道だよ。どんなに靴底が厚かろうが、どんな痛みにも耐えられる精神力があっても、きっと挫折してしまうような。そんな道だ」
葛葉は気付けば何も言えずに、ただただ無言で俯いていた。葉加瀬の羅列する言葉に、追求や質問、反論や持論を発言する事ができない。
だって事実なのだから。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
ちょっとHな日常って書いてあるのに、全然H無いじゃん……。100%題名詐欺になってしまう! ので、これからはHを多めにしていきたいなと思います!
面白いと思って頂けたら、ブックマークと評価をお願いします‼︎