十二話 堂々と!
久しぶりの早め投稿!
――それから一時間後――
「変態共、死ぬ覚悟はできたかのう?」
酔い潰れた――最早寝てる者もいるが――男性冒険者達を鬼丸は踏み付け、殺意の籠った目で冒険者達に罵声を浴びせていた。一部喜んでいる者もいる。
「何やってんだアイツらは……」
そんな光景を、レモンサワーをちびちび飲んみながら見守っていると、一人の冒険者がそうら呟きながら葛葉の隣に立った。
「……あ、あの時の」
「よ、久しぶりだな嬢ちゃん」
その冒険者は、かのワイバーン戦で共闘した冒険者パーティーのリーダーだった。驚きの再会に思わず葛葉は口をポカンと開けてしまった。
「聞いたぜ? すっげー活躍したんだってな」
「いえ、私はそんな……何も出来てませんよ」
「謙遜のしすぎだろ、それは流石に。本当に何も出来てない奴がいたら、涙目になってるぜ?」
葛葉の毎度の如き自責に、一蹴されて出番なんか弓で遠距離射撃しかなかった冒険者達を指差し、リーダーさんはそう言う。
指の指す方向を見てみれば、指されたLv.1冒険者達が血涙を流していた。
「……堂々とした方がいいですかね?」
「刺されたくはなかったらな」
「……えぇ」
普通にありそうで怖い。
普通にこの世界は治安が悪い。前世の世界も十分治安は悪かったが、この世界では悪いなんて物ではない。
「ま、流石に冗談だがな。Lv.2の嬢ちゃんを刺せるやつなんて早々居ねぇさ」
「で、ですよねぇ?」
ふぅっと一安心して、葛葉は姿勢を正しピンとして、胸を張る。
「おっ、早速か?」
「はい……! 堂々としてみますよ」
「おう! そうしろそうしろ、冒険者舐められたら終わりだからな!」
ガハハハと笑いバンバンと葛葉の背中を叩くリーダー冒険者。彼の言う通り、冒険者は舐められたらそこで終わりな職業なのだ。
「そんじゃ、嬢ちゃんも頑張れよ!」
「……はい」
手を振りながらリーダー冒険者は葛葉の下から離れて行った。……そう言えば名前知らないや。でもあの人のおかげで少し気分が良くなった。鬼丸が冒険者達を踏み付け、罵声を浴びせている光景に顔を向け、葛葉はグラスを手に取り酒を一気に呷った。
「はぁ……久しぶりに飲むと結構辛い」
呷った事を後悔しながら、葛葉は何ヶ月ぶりかの酒を味わう。この世界の飲酒が十六歳からだなんて、ありがたいにも程がある。
「……まだ一杯だし、お風呂入ろっかな〜」
空になったグラスを机の上に置き、指で机をトントンと叩き思案する。こんな宴会の中、勝手に離席するのもどうだか。だが、少々服が汗臭いのだ。乙女たるもの、常に清潔にしなくてはならないはず。
「入っちゃお」
指で机を叩くのをやめ、葛葉は席を立つ。スタスタとギルドの奥に続く扉へ歩いて行ってしまった。そんな光景をジュースを飲みながら見ていた律が、コップを机に置き葛葉の後を追うと歩き出す。その時だった。
「――どこへ行こうと言うのじゃ?」
ガシッと肩を掴まれ、耳元で囁かれる幼い声。ゾクゾクと全身の鳥肌が立った。
「く、葛葉さんの所に〜……」
律は鬼丸に少々、いや多少、いやはちゃめちゃにトラウマを覚えていた。それも無理は無いだろう、あそこまでボコボコにされたのだから。
「飲むのじゃ」
「い、いや〜……私お酒は……」
「……一杯でもいいのじゃ。親睦を深めるとするのじゃ」
「うぅ〜…………はい」
小さく唸り、律は渋々鬼丸の申し出に承諾するのだった。そんなやり取りの横では、五十鈴が18寸もの大盃に注がれた度数の高いお酒を一気飲みしていたのだった。
それを冒険者達が囲み、歓声を上げていた。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
葛葉は一応酒は強いです。そいう設定です。どれくらいかと言われると……日本酒(度数がかなり高いの)百本がぶ飲みしても平気です! ……強いというより化け物ですね。
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