九話 一応親睦会
今日は早めです‼︎
先の戦いで、葛葉はこの街ではかなり有名になった。同時に鬼丸も悪い意味で有名になっていた。だが今までの生活は変わらず、あの戦いが始まる前のような、のどかな時が過ぎてい――。
「うぬらよ! 今宵は! 吐血するまで飲むのじゃあぁあああああああ‼︎」
『うぉおおおおおおおお‼︎』
なかった。
小さなお子さんはスヤスヤと眠っているであろう時刻。ギルドでは荒くれ者の大人達が、お酒の入ったジョッキを掲げて歓声を上げていた。そしてその中心地には、勿論鬼丸が積み上げられた椅子の上に立っていた。
「まさかこうなるなんて!」
鬼丸にギルドで酒を飲むように言ったのは、紛れもなく葛葉である。
だが、葛葉本人も宴になるとまでは予想出来ていなかった。予想していたのは、緋月も加わって面倒臭くなることだ。
「い、いいんですか皆さん⁉︎」
葛葉の後ろ、盛り上がる男性冒険者とは真反対の女性冒険者達に振り向き、女性冒険者達に聞こえる声で尋ねた。冒険者ならば毎日クエストに行ったりする時もある。それなのに、酒を吐血するまで飲んではクエストに支障を切らすのでは……と葛葉は心配していたのだ。
「んー、まぁいいんじゃ無い?」
「ねー、男って馬鹿だから……後先考えてないでしょ?」
「そんな事よりさー、葛葉ちゃんと沢山お話したいな〜、お姉さん達は」
辛口な女性冒険者達に、葛葉の表情が戸惑い顔から苦笑に変わり、また戸惑い顔に変わってしまう。
「え、えと〜その〜」
葛葉は人と話すのはそんなに得意では無い!
「………………お手柔らかに」
葛葉は最後にそう言い残して、女性冒険者達に飲み込まれるのであった。
「……ファイトですよ、葛葉様」
そしてそれを酒を飲みながら眺めていた五十鈴がボソッと呟く。五十鈴の視界に広がる光景、右には女性達の花園。左には荒くれ者共が狂喜乱舞してるかのような地獄絵図。両方とも五十鈴には馴染めないのだ。
「――五十鈴さん!」
と感慨に耽っていると、横から声を掛けられた。五十鈴は声が掛けられた方向に目を向けると、そこには律が立っていた。両手に皿を持ち、酒のつまみが盛られていた。
「……ありがとうございます」
「はい! どういたしまして!」
ニパァ! と輝く太陽な笑顔に五十鈴は目を細めてしまう。皿を受け取り、五十鈴と律は乾杯をして、葛葉が責められている光景を見ながら飲むのだった。(質問責めの方だよ!?)
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