三十四話 マグニャム!
どんぐらいの衝撃か気になりますね! いつか自分で撃ってみたいです!
収束した光が霧散すると、やけにスライド部分がゴテゴテした銀色のかっこいい銃が、太陽光を反射しながら現れた。
デザートイーグル。知らない人の方が少ない名銃である。フォルムのかっこよさもその要因だろうが、何と言っても自動拳銃でありながらマグナム弾を撃てるのが、多くの人々を魅了したのだろう。バイオも原因ではあると思うが。
軍に正式採用はされずに民間で流行るという、流石銃社会のアメリカさん。……装弾数は七発、後は自分の肩や腕が保ってくれるかどうか。これ以上の『想像』の使用もしんどくなってきているのだ。一発だけでも当てれば勝てる。
葛葉はそう確信しながら、デザートイーグルの引き金を引き始める。鬼丸も、見たこと無いものを突きつけられ疑問符を浮かべていたが、本能が危険と察して咄嗟に動いた。距離を殺し、葛葉の腕を上へ叩き、直ぐに体勢を立て直そうとする葛葉の顔面に三発、殴りを叩き込む。
「――がっ」
強烈な一撃に葛葉の顔が空を見上げる。引き切る後ちょっとでの出来事だった。
「…………――くっ!」
そして空を見上げていた顔を戻して、直ぐに鬼丸から距離を取り、後ろへとかなり飛び退いた。地面に膝をつき、荒い息を立てながら、口の中にある異物――鬼丸の殴りで欠けた歯や折れた歯を吐き出す。眼球は破裂し、瞼からは血が漏れ出す。
(……危なかった。さっき気絶してた……!)
それは鬼丸に殴られた直後のことだ。
だが幸いにも、デザートイーグルは手放さずにしっかりと手に持っている。距離も大分ある、拳銃は超近距離ではなく、近距離に長けている。この位置の方が使いやすい。せめて一発だけでも撃ちたいのだ。せっかくの50AEの弾を込めた状態だというのに、一発も撃てないではかっこよく登場したデザートイーグルが可哀想だ。
「……『想像』も後二回くらいかな」
歯と目を治して、頭痛に耐えながら葛葉は呟いた。『創造』と同じ回数しか、もう『想像』も使えない。頭痛のせいかエイムが定まらない、銃口を構える手が震えるのだ。ゆっくりと銃口を鬼丸に合わせて、ゆっくりとトリガーを引いた。
「――っ!」
大きな銃声がすると同時に、肩が外れるかのような衝撃がやってきた。蹈鞴を踏み、よろけながらも鬼丸を見る。すると、そこには無傷の鬼丸がいた。前にある拳を、鬼丸はゆっくりと開く。すると大きな円錐状の物が地面に落ちて行く。
「……まじぃ〜?」
どう見ても銃弾だった。げんなりしながら、葛葉は鬼丸にまた銃口を合わせる。次は手も震えない、照準もブレない。深呼吸をしてから、次は一気にトリガーを引き絞った。
またしても大きな銃声と衝撃が、葛葉はそれらに歯を食い縛りながら、照準を合わせる。そしてまた撃った。
(二発連続……! 流石に一発は当たる筈!)
期待は大。揺らいだ勝機もまた、盤石のものとなる。だが、理不尽は嘲笑うかのように葛葉の思う結果とは全くの結果を示す。
「……熱いのじゃ〜」
手からこぼれ落ちる二発の銃弾。虚しく地面に落ち、音を立てるだけだ。超人に、常人が作った武器で戦っても、無駄なだけだ。銃という武器は、人が人を効率良く殺すために作られたのだ、超人を殺すためになんて考えられていない。
「終いにするかのう……!」
鬼丸が疾駆する。目に止まらぬ速さとはまさにこの事なのだろう、デザートイーグルを両手で構えて発砲する。一発撃つだけで、全身が痺れるかのような衝撃が伝わって来る。両手で撃っているのにも関わらず、頭上まで跳ねる銃。撃った弾は鬼丸に当たる事はなく、鬼丸と葛葉の距離が徐々に近くなって行く。
「――くっ!」
直ぐに照準を合わせ、また発砲。衝撃に跳ねる拳銃を直ぐに元に戻し、また発砲。
葛葉が撃っているのはどれも鬼丸の残像であり、銃弾の無駄撃ちとなっている。数撃ちゃ当たるというが、そもそも、鬼丸本人に照準が合っていないのだから、かなりの数撃ったとしても当たりはしない。
「――っ⁉︎」
そして最後の一発を撃ち、スライドが交代したまま止まってしまった。全弾撃ち尽くしたのだった。
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手でマグニャム弾を防ぐって……流石は鬼ですね。
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