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三十一話 全力

今回、結構残酷かもです!

鬼丸は金棒に向けていた視線を戻し前方を見据える。そしてため息と共にそう呟くのだった。今、鬼丸の前方、真ん前にいるのは葛葉のみだ。葛葉を見据えて鬼丸は、


「【英雄】がして良い顔じゃないのじゃ…………今のうぬはまるで【狂犬】じゃな」


堂々と歩き瞳を緋色に爛々と輝かせる葛葉に言ってやった。埃を被った紺色の髪、傷だらけの身体、傷だらけの戦闘服。その姿は野良犬か狂犬を彷彿とさせる。付与魔法が可視化し炎を纏っているかの様な葛葉。その炎が揺らめくと同時に、葛葉は走り出した。


「炎で来るのならば、わしも炎で行くとしようかのぉ『燎原之火』」


葛葉が迫って来る中、鬼丸は戦闘態勢を解き、人差し指を立ててニヤリと魔法を行使し始めた。しかも無詠唱でだ。だが葛葉の勢いは変わらず鬼丸に突貫する。ナイフを構えていつでも攻撃ができるように。そう、思っていた時だった。


「――っつ⁉︎」


突如痛みが走ると同時に手先が燃え上がったのだ。直ぐに叩いて鎮火させようとするが、その炎は消えずに勢いを増していく。その勢いは既に止められない。手先から腕へ、腕から肩へ、肩から首へと炎が広がる。更には足からも発火し出し、一瞬にして下半身を燃やし尽くした。


「――っ⁉︎」


叩こうが手足を振ろうが炎は勢いを止めない。そして葛葉の身体は一瞬にして炎に包まれるのだった。付与魔法の炎をとは違い、身体を焼き尽くす猛火。全身に炎が広がり、葛葉の身体が膝から地面に崩れ落ちた。


「……さて、取りに行くとするかの」


その様子を眺めていた鬼丸は、パッと表情を変えて金棒があるとこに歩き始めた。

今だに燃え続ける葛葉の身体には見向きもしない。そして金棒の柄を握り、素晴らしい金棒捌きを披露する。と同時に、鬼丸の表情がまた変わった、笑みへと。


「……時間じゃの」

「……………………――っ⁉︎⁉︎⁉︎ はぁ〜〜〜〜〜‼︎」


葛葉の身体が光に包まれ、元の身体に戻る。そして勢いよく上体を上げてから、深く深く深呼吸をするのだった。


「流石じゃな〜……制限付きとはいえ、自分の身体に起こったことを無かったことにするのじゃからな」


毎度お馴染みの『想像』で、葛葉はギリギリ生き返ったのだ。


(……本当にダメかと思ったぁーーーー⁉︎)


自分の両手や、自分の身体を見回して葛葉はこれ以上ない安堵を覚えたのだった。なんせ生きてる内に段々と身体を燃やされるなんて、中世の魔女狩りでも聞いたことがない。(あるかもしれんが)

あの感覚はダメだ。絶対にダメだ。理解どうこうの話ではない、あれは生きてる内に味わってはダメな感覚だった。筆舌し難いという言葉が、これ程までにしっくりくる事があるとは思わなんだ。


「どうじゃったかの〜? 焼け死ぬ感覚は……」

「…………うっ。……はぁ、地獄そのもの」

「そうかそうか……んまぁそうじゃろうな!」


とヘラヘラしながら笑っている鬼丸に、葛葉はこれ以上ない恐怖を覚えた。そりゃそうだろう、人を焼き殺そうとしといてヘラヘラ笑う時点で知的生命体では無いだろうから。


「今の魔法はのう! 燎原之火と言ってのう〜、指定した場所と範囲に居る、指定したモノを問答無用で焼き殺す魔法でのう〜」


ピッカピカの一年生! みたいな顔で物凄くヤバいことを言っている鬼丸だが、本人にヤバいという自覚は存在しない。今の鬼丸は――まるで図工の授業で紙パックを使った工作を親に自慢げに見せ褒めてもらおうとする――純粋な心で魔法を語っているのだから。


「どうじゃ⁉︎ すごいじゃろ!? すごいであろう!?」

「………………す、凄いなー(棒)」


詰め寄って来る鬼丸に、棒読みで返事をし冷や汗しか掻けない葛葉。

最早、葛葉は戦意を喪失していたのだ。先も聞いた通り、『燎原之火』は指定した場所・範囲に居る、指定したモノを問答無用で焼き殺す魔法だ。モノ、そうモノだ。物でも者でも何でもかんでもと言う事だろう。

そんな魔法を持っている相手に勝機は最早無い。ゾンビ作戦でも良い気がするが、『想像』を使い過ぎたがために今の葛葉はかなり疲弊しまくっている。

糖分を取れれば後二、三回は復活出来るが、した直後に気絶するだろう。ので、もう戦うことが無意味なのである。


「……して、うぬよ先にうぬは運命に抗う方法は全力と言うたのう?」

「……」

「これが今のうぬの全力か?」


葛葉は見上げた、鬼丸の顔を。その顔は非常に冷酷で冷徹な無表情であった。目は葛葉では無いモノを見ているかのような目だった。

落胆したような目、期待外れと悟った目、もう使えないゴミを見るような目、大して使ったり役に立ったりして無いのに壊れた百均の道具を見るかのような目。

――そんな目で見るのはもう辞めて……――


「全力でやるのじゃ、何を恐れる、何に恐怖をする。【英雄】が何に怯えているのじゃ……」


葛葉の両頬を掌で挟み、鬼丸は葛葉の額と自身の額をくっ付け囁いた――

読んで頂き、ありがとうございます‼︎

生きたまま燃やされるって、想像しただけでも失禁しそうになりますね!

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