三十話 顕現
遂に!
(まさか……下半身不随!? 『想像』で治さないと――っ!)
動けない葛葉の下に飛んでくる鉄塊。寸分違わずに、金棒は葛葉を圧殺しようとする。だがそれよりも、葛葉の方が早かった。
『想像』での治療が間に合い、身体を捻り金棒が落下してくる位置から退避したのだ。
「……Lv.2で」
葛葉のした事は、普通に考えれば可笑しい。並大抵のLv.2であれば、既に肉塊へとなっていただろう。それなのに、葛葉は肉塊にはなっておらず、逆にピンピンしている。
「……はぁ……はぁ……」
立ち上がり、葛葉は苦痛に歪む顔で鬼丸を見据える。これ以上はない絶望、鬼丸に勝てるビジョンがまだ見えない、見える気配が無い。
今の自分では、鬼丸を倒してこの街の住人達を、仲間を、親切にしてくれた人達を救えない。
「……――っ。……何を、弱気になってるんですか」
立つのもやっとな脚、ナイフを持てている事自体が奇跡の手、今も目の前の絶望に抗おうとする意識。全て揃っている。これだけで、葛葉は戦える、絶望に勝てる。
「意志を力に……『付与魔法【紅焔鎧】』」
「――っ⁉︎」
大地が爆ぜ空気が燃え尽きる、葛葉の周りでは陽炎が発生する。そして、その現象は握っているナイフにも付与された。そしてその現象は葛葉にも付与される。所謂エンチャント、付与魔法だ。
「まさか……魔法が顕現したのか!?」
この世界の魔法はかなりレアで、Lv.2にならない限り顕現はしない。しかもそれは絶対ではないのだ、その人の潜在能力で顕現する。センスがあれば強い魔法が、センスがないのであれば弱い魔法が顕現する。その上、センスがあり強い魔法が顕現したとしても、別の意味で強かったりと。
とにかくこの世界は何処までも世知辛いのだ。だが葛葉が顕現させた魔法、火・炎系の付与魔法。かなり強力であり、見たところステータスが爆上していた。
「――ぐっ!」
一瞬で距離を詰められナイフが鬼丸へ届いた。深くはないが浅くもない、切られた傷口からはドクドクと血が溢れ出す。鬼丸は飛び退き、傷口を抑えて鬼族の超回復で傷を治癒する。
(なんじゃ……先の銀髪の時とはまた違った強さなのじゃ)
ぶっちゃければ、先の方が強かった。だがあれは制限付き、大いなる力が過ぎたが為身体の穴という穴から血が溢れ出したのだろう。
(武器がなくてはの)
鬼丸の目が向くのは地面に突き刺さった金棒。しかし金棒を取りに行こうとしても、その道中に葛葉が居るためかなり面倒。傷を負おうがすぐに回復できる……のだが、あれはかなり体力を消費するため、なるべく傷は負いたくないのだ。
「全くやれやれじゃ……」
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
やっと魔法が顕現しましたね! 皆さんは魔法が顕現するとしたら、どう言ったのが良いですか?
私はもしもボックスのような、世界的な常識改変が出来るのが良いですね……ぐへへ。(18禁のことがしたいわけでは無いです)
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