二十九話 運命に抗う
腕がひしゃげる……?
「確かにそうじゃな……奴は最後の最後で心が折れてしもうたからのう」
運命に抗う、言葉にする事は簡単だろう。だが概念にどう抗うと言うのか。理不尽な運命があれば、幸せに満ち満ちた運命もあるだろう。だから何なのか。
「ならば訊こう……うぬは運命にどうやって抗うのじゃ?」
「……私は」
私は運命に抗わずに、その運命を受け入れた。あの時に、帰路に立ったあの時から私は運命の従順なるペットとなった。だから運命に抗う方法なんて分からない。
「私は……」
「……答えてみせるがよいのじゃ、うぬが希望足り得ることを証明するのじゃ……。運命なぞという物に、どう抗うのじゃ?」
「……抗う。……――私は全力でクソみたいな運命に抗うっ‼︎」
「……――っ。そうじゃ! それでこそ【英雄】よ! さぁ、証明するが良いのじゃ! わしと言う絶望の運命に――っ‼︎」
ナイフを構え猛スピードで駆け始める葛葉、その葛葉を見て鬼丸はニヒッと、まさに鬼の様な笑みを浮かべて金棒を手に取った。その構図は、魔王が【英雄】を迎え撃つ、そんな構図だった。そして数瞬、二振りのナイフが金棒と打つかり合い甲高い音を響かせた。
「――ぐっ!」
渾身の力でもびくともしない金棒に、葛葉はまんまと攻撃を跳ね返される。腕が弾かれがら空きの腹部、また蹴りか拳が炸裂するかと思っていた直後、巨大な鉄塊――金棒が葛葉にクリーンヒットした。そして葛葉は、まるで野球ボールかの様に吹っ飛ばされてしまった。吹っ飛ばされる速度は優に二百を超えていた。
「――ガッ!? ……――ぅあ……ぉが」
半端ない速度で光の壁に激突し、体中から嫌な音が聞こえると、次にはかなりの高所から腕から落ち始めた。そして落下は一瞬で、すぐに腕がひしゃげた。葛葉自身の体重が数十メートルの高さから落下したのだ、そりゃ腕がひゃげるのは当たり前だろう。
「……ぅえ」
だが深刻なのは腹と背中だ。鬼丸の攻撃を受けた腹部は紫を通り越して黒色になり、強打した背中からは常に激痛が走っている。ひゃしげた腕とは反対の腕で上体を起こし、立ち上がろうと脚を動かそうとした。だが葛葉の脚は思う通りに動かなかったのだ。
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腕がひしゃげたら、自分だったらショック死してますね!
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