二十四話 英雄は遅れてやってくる。
毎日投稿したいのに、運命はそれを拒むなんて‼︎
曇天の空に幾つかの綻びが生じる。その綻びから注がれる太陽の光。淡い光が大地を照らし、建物を照らし、人々を照らす。そんな中、少女二人は激しく剣をぶつけ合っていた。一方が【戦帝】そしてもう一方が巫女。ネームドの戦いは凄まじいの一言に尽きる。そして両者は一度立ち止まり、一時的に戦いが止んだ。
「……くっくっく、ふふふはははは‼︎ 面白いのぉ〜、うぬは!」
唐突に静寂を破り、高笑いする鬼丸に緋月が驚き、その戦いを見ていた観衆までもが驚いた。手に持っていた金棒を地面に置き、腹を抱えていた手を下ろすと溜息を吐いた。
「まさか……先はわしに手を抜いておったとはの」
「……いや〜お陰で痛い目見たよ〜」
大剣を器用にクルクル回し、鬼丸の言葉に緋月は空笑いと共に応えた。八重樫緋月は刀よりも大剣の方が好きなのだ。扱いもプロ並み――否、至高の領域に達している。勿論モンハンでも大剣装備は当たり前。故に、大剣を使って戦う時は緋月が追い詰められたと言う証拠なのだ。
「……じゃが、たとえ本気を出したとしてもわしには勝てんよ」
「そうかなぁ? 案外サクッと倒しちゃいそうだけど……?」
「……面白いなぁ、うぬは」
ニコニコと穏やかだった鬼丸の顔が一気に険しくなり、キッと緋月を睨めつけてきた。どうやら緋月の煽りが聞いたみたいだった。緋月は「あ、あぁぁ……」とピクピクと口端を痙攣させ、鬼丸の地雷を踏んだことに顔を青くするのだった。そして鬼丸の姿が掻き消えた。
「……――っ⁉︎」
鬼丸の姿を探っていた緋月に、背後の強烈な威圧に大剣を盾のように翳し、鬼丸の一撃を受け止める。受け止めるだけなはずなのに、立っていた位置からズレ、指先がジンジンと痛むのだ。今更ながらに、自分は何と戦っているのだか。
「――くっ! うっ!? ぐぅうう‼︎」
掻き消えては緋月の不意を突く鬼丸の一撃。その一発一発を受け止めるだけで、体力がごっそりと削られてしまう。防戦一方になっては勝ち目は絶対に無いのだ。ただ、攻めに転じたとしても容易く葬られるだろう。
「――がっ‼︎」
そして鬼丸の強烈な蹴りが緋月の腹部に命中し、全身の力が抜けてしまった。ヘタリと緋月の身体は倒れ込み、立ちあがろうとも腕に脚に力が入らないのだ。ドシンと鬼丸が金棒を置く音と歩み寄って来る音が緋月の鼓膜を揺らす。
歩み寄って来る道中、鬼丸は地面に落ちていた両刃剣を足で弾き、クルクルと宙を回りながら剣は鬼丸の手へと落ちる。ゆっくりと、鬼丸は切先を緋月へと向けた。殺気に満ちた目には、容赦してやると言った情けは存在しない。そしてゆっくりと鬼丸が剣を上げ始めた時だった。何処からとも無く聞こえてきた、大きな音。鬼丸は弾かれたかのように音の方へ顔を向けた。
「……っ」
「葛っちゃん……?」
二人が向く場所には、紺色の長髪を揺らし駆け着けて来る葛葉の姿があった。手には拳銃が握られており、先ほどの音は銃声だったと緋月は察した。実際鬼丸の脚と腕に銃弾は命中したが、鬼丸にはどうやら余り効いていないらしい。
「緋月さん! 耳塞いで伏せてっ!!」
その葛葉の声に緋月は従い、両耳を手で塞ぎ地面に伏せた。そして一瞬で、塞いでも鼓膜を劈くような音に肩を跳ねさせる。そしてチラッと見えた凄まじい光量。音と光、葛葉は閃光手榴弾を投げたのだった。
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