二十三話 意思を
何でだ……。
「――来たね」
「葉加瀬さん!」
家屋の直ぐ側で葉加瀬と、複数人のギルド職員や冒険者が集まっていた。冒険者達は鬼丸に一蹴されたLv.1だ。正直心許ない……。
「葛葉ちゃん、少しいいかい?」
「は、はい?」
博士の近くに寄った葛葉に、葉加瀬が向き直り声を掛けてきた。葛葉は戸惑いながらも返事を返す。すると葉加瀬は優しく、葛葉の手を掴みギルド職員と冒険者達から距離をとった。
「……本調子ではないね?」
「……ッ‼︎」
不意を突かれた葛葉が息を呑み、葉加瀬がやっぱりかと肩を窄める。葉加瀬の言う「本調子じゃない」とは、葛葉の身体や葛葉が頑なに使わないスキルで察せられた。
「……緋月の言葉から察するに、君は大きな怪我や小さな怪我を負ってもスキルで無かったことに出来るのだろう?」
「……そうです」
「それに拳銃も創造しない……何故だい?」
「……」
葛葉の身体は傷だらけだ。大きな怪我こそ負わされていないが、それでもこの傷の量で平気で立っていられれのは異常と言いざる負えない。それに葛葉は特訓の時に一度だけ拳銃を創造した。それを考えれば、何故その両方をやらないのか。
「理由を聞かせてくれ」
「…………あの戦い方は駄目です。誰かに見せていい戦い方じゃない……!」
「……そうか」
葛葉の言葉を聞き、葉加瀬は一度首肯する。
緋月が愚痴るほどの戦い方なのだ、葉加瀬も馬鹿ではない。やらせて言い訳がない。
確かにそんな戦い方は見せれるわけがない。だが時と場合がある。必死になって自分達を守ろうと戦う者の姿を見て、誰が指を指して笑うだろうか? そんなのは葛葉の杞憂だ。この街は冒険者の街なのだから。
「……葛葉ちゃん。そんな心配はしなくて良い」
「……ぇ?」
「この街は冒険者の街だ。戦い方を野次る者は居ない、負けを野次る者は居るだろうがね。……戦う事に意味がある。だから、戦ってくれ。君の戦い方で、戦ってくれ」
葛葉の事を鼓舞する言葉を、葉加瀬はいつものように優しい口調で――揺るぎない意志を奮起させるように――そう言ってくれた。葛葉は目を大きく見開き、被りを左右に振り目を覚ます。
「やってくれるかい?」
「……はい‼︎」
葛葉はこの日、初めて意志を宿した声で返事を返した。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
なーんか、前もこんなことありましたね。確認するようにしてたんですが、今回はおろそかにしてしまいました。すいません。今日の分は夜投稿します!
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