二十話 苦しい戦い。
鬼化状態の鬼丸と、Lv.5以上の二人が一瞬でやられた鬼丸と、苦しいとは言え戦える緋月って……。
ガキンッ‼︎ ガキュインッ‼︎ とおおよそ刀から鳴ってはいけないような音が鳴り響く。鬼丸の武器との打ち合いに悲鳴を上げているようだった。
「――ぐっ」
一撃一撃が死を伴う即死の攻撃。痺れる手を、崩れ落ちそうな足を、挫けそうな心を自分の頭の中で鼓舞する。この戦いにオリアの街の住人達の命が掛かっている。負けられない、負けたくない。痛む身体を動かし、緋月は鬼丸との絶望的な戦いに臨む。
「ほほう、まだ意思は挫けんか」
笑いながら金棒を振り回す鬼丸に、緋月も負けじと笑顔を作る。あの人はただの戦闘狂なだけだったかもしれない……だけど、人々に意思を与える。戦っている者が辛そうな表情をしていれば、戦って居ない者の士気が下がる。そうなっては駄目だ。絶望に抗う力を見失えば、人は死んだも同然。
「……勝たなきゃ行けないからねっ……‼︎」
力を振り絞る、身体中の力を手に、刀に、一点に集中させる。鬼丸の攻撃を力尽くで防ぐ。そして流し、また流し、さらにまた流す。鬼丸の攻撃を去なし、隙を作り防御が薄くなった所に刀を叩き込む。
「させんのじゃ」
「――っ⁉︎」
狙いがバレ、一瞬の隙を突いた攻撃は鬼丸の持つ金棒によって防がれた。緋月が俯き、悔しそうに笑った。
「まさか、本当に乗るなんてねっ‼︎」
「穿て『電磁砲』」
「――っ⁉︎」
緋月が身体をずらした後ろには壁に寄りかかり、片手を突き出し詠唱を終わらせた葉加瀬が居た。そして詠唱が終わったと同時に、一筋の一閃の光が鬼丸の左半身を覆った。そのまま光は一直線に遥か彼方に飛んでいった。
「……やったか、なんて言う必要も無いか」
左半身を溶かされる形で消失したと言うのに、鬼丸は立っており身体も元々の再生能力と鬼化時の超再生能力で回復していっている。これが鬼。日本は古来より鬼を恐れていた、だが現代人には何故恐れていたのかは、分からなかった。たかようやっと現代人の緋月達もその気持ちを理解出来たのだ。
「まったく……一張羅が台無しじゃな」
身体と共に溶けた豪華絢爛の着物を一瞥し、鬼丸はため息と共に虚空庫に手を突っ込んだ。そして数秒ゴソゴソと何かを探し、それを引っ張り出し直ぐに羽織った。その羽織った物とは、日本人なら誰もが見慣れているパーカーだった。
「うむ、良い匂いじゃ」
ブカブカのパーカーの袖を顔に近づけ、スーハーと深呼吸をし鬼丸はそう呟いた。豪華絢爛な着物は無造作に投げ捨て、地面に突き立たせて居た金棒の柄を再び握り直し、ニッと笑顔を浮かべ、
「さぁ、やり直しじゃな」
そう言うのだった。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
緋月も頑張ってますね! これから葛葉も頑張りますよ!
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