十七話 最強の鬼
緋月Lv.9。葉加瀬Lv.8。千佳Lv.8。
補足です!
「あの娘には誰も勝てないさ、努力の量では」
緋月の強さも、ひとえに緋月が【英雄】のパーティーメンバーだった事が、強さに関係しているのだろう。だがそれよりも、緋月は努力をした。血反吐を吐こうが、生死を彷徨おうが、努力を重ねて来たのだ。
「……ん、どうやら加勢の準備が整ったようだね」
「何年振りかな〜戦闘は」
二人がそう言うと同時に、未完成だった魔法陣が完成し、千佳が走り出した。魔法陣からの光属性の魔法が放たれ、射線場の物体を溶かしながら鬼丸を貫こうとするが、既で避けられる。だがタイミングを見計らった、千佳の攻撃が鬼丸を強襲する。この場に【悠久無双の魔女】【戦帝】【孤高ノ氷姫】の三人のネームドが揃った。この異世界の何処を探しても、ネームドが一斉に三人も揃う事は存在しない。あり得ないでは無い、あってはならないのだ。
「……魔法展開【開花】」
葉加瀬が呪文を紡ぐと、一門だった魔法陣が二門三門と展開されていき、次第には三桁を上回る数の魔法陣が展開された。
「一般攻撃魔法【百花繚乱】」
次には無数の魔法陣から光線が放たれる。先とはまた一風変わった攻撃で、攻撃力の高い魔法というだけだ。
「鋭刀弥生丸【木草弥ヤ生ヒ月】」
そして緋月がまた新たな刀を取り出し、鞘から刀身を抜くと同時に葉加瀬、千佳、緋月のステータスが上がったのだった。弥生丸――緋月がいい値でオーダーメイドした魔法刀である。その刀の効果は、自身と味方をのステータスの上昇、及びバフの付与だった。
「氷竜剣【絶対零度】」
緋月が魔法刀だったのに対して、千佳のは魔法剣であった。剣に触れたものを凍らせ、大地に突き立てる事で足場を凍らせ足止めや氷漬けにすることが可能な剣だ。その中でも【絶対零度】はこの剣で斬られても斬られてなくても、必ず凍ってしまう事。扱いを間違えれば味方にダメージが行ってしまうのだ。
「――くっ」
この連携攻撃より、流石の鬼丸も防戦一方になるしか無い。以心伝心、一蓮托生、三位一体とは正にこの事。
目配せもせずに、ただ自分たちの戦い方をしているだけ。本来なら連携など取れるはずがない、だが完璧な連携に鬼丸は動くことすらできなくなる。お互いがお互いを信じ合い、お互いのしたいことに合わせると言う事を瞬時にやっているのだ。
(このままでは、わしは負けてしまうの〜)
そう、このまま……なら。
「ウヌらの力量はよく分かったのじゃ…………。誇れ、わしに角を顕現させたものは、今まで一人しかおらんかったのじゃから」
『――っ⁉︎』
それは絶望の一言。戦っている本人達が一番理解している筈だ。この化け物が、角を顕現させてしまえばこの場いる者全てが皆殺しにされると言うことに。瞬間、クラッと緋月と千佳がタタラを踏み、葉加瀬の魔法陣が幾門か消えてしまった。
「……不味い」
周囲の魔力を貪り食い、鬼の名に相応しい角を顕現させる鬼丸に、頰を引き攣らせながら呟く。鬼化した今の鬼丸とは、既に埋まらない圧倒的な強さの壁ができていた。
「葉加瀬――っ‼︎」
と緋月が叫んだと同時に、ドゴォォンッ‼︎ と言う鉄の塊が落ちるような音がした。
「……絶対防御に罅か」
不可視の防壁の殴られた箇所が、凹み罅が入っている。絶対防御の防御力は絶大で、かの『スターゲイザー』戦での際も、ブレスを完全に防いだ上に爪の攻撃や尻尾での攻撃でも罅が入らなかったのだから。
「チッ……。何じゃ、一撃で倒せんのか」
「魔法使いにとって自分を守るのは常識だよ」
直後、鬼丸を挟んで一直線に小さな魔法陣が展開された。そして魔法陣から剣が勢いよく突き出て来たのだった。鬼丸はバク転や宙返り、体操選手のような感じで魔法の攻撃を全て避けるのだった。
「そう言うのあり?」
葉加瀬がおおよそ現実にはあり得ない避け方をした鬼丸に、ゲンナリとしながら愚痴をこぼした。そしてまた魔法陣の展開を進め始める。だがそんなのを見す見す鬼丸が逃すわけ無く、また葉加瀬に襲い掛かるが氷剣の刃がそれを阻止する。そして追撃に足の腱が刀によって切断されてしまった。
三人の猛攻に、攻めることが出来ずにただ鬼化しただけであった。そして鬼化は周囲の魔力を喰らい顕現させる力。この場の魔力が少なくなれば鬼化は解除されてしまうのだった。
(このままじゃいかんのう……)
剣を刀を手を突き出す三人を睥睨し、鬼丸は前傾姿勢を解いた。なおも三人は警戒を怠らず、鬼丸の一挙手一投足から目を離さない。たがそれが鬼丸にとっては好都合だった。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
鬼丸強すぎん……? と自分自身もそう思います。
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