十五話 【戦帝】
葛葉! あなたが死んだら、鬼丸は誰が倒すの!?
次回:葛葉死す!
デュエルスタンバイ!
「……葛葉、ウヌは」
虚ろな目、表情のない顔に、鬼丸がまさかと思った時、更に葛葉は出血し出した。
(このままでは出血多量で死ぬのじゃ――っ!)
それは鬼丸にとって最悪の結末だった。
五百年振りの再会だと言うのに、目の前でこの手で殺すのは違う。このままでは――っ。そう鬼丸が内心焦って居た時だった。魔力の塊が近付いているのに気付いた鬼丸が、後ろを振り返るとそこには巨大な炎の球体が迫って来ていた。まだナイフで切り掛かってくる葛葉の身体を吹っ飛ばし、片手を突き出して炎の球体を打ち消した。
「…………ほう」
防いだ片手は見るに堪えない程の火傷をして居た。鬼丸の手をここまで出来る魔法使い、この街にはたった一人、【悠久無双の魔女】だ。
「もう来よったのかのう」
魔法を放ったであろう、白衣の人物が鬼丸を見据え、鬼丸もその人物――葉加瀬を見据える。だが、葉加瀬が突き出して居た手のひらを空に向け、人差し指で空を指した。鬼丸が上を見るよりも早く、それは来た。
「――ッ⁉︎」
一瞬にして鬼丸の両腕が飛び、肘から下が無くなってしまう。それは空から降ってきた影。Lv.12の視力を持ってしても反応が遅れるスピード。オリアギルド支部ギルド長Lv.9【戦帝】かつて誰もが恐れた戦の帝――八重樫緋月。
「……」
「…………ちと面倒じゃな」
殺気に満ち溢れた目は、緋色に爛々と輝き鬼丸を鋭く睨みつけて来ていた。その光景を見て居たギルド職員も律や五十鈴も葉加瀬ですら足が竦み、手が震えその恐怖は次の者へと伝播して行く。
「――っ!」
緋月がふと目線を外すと、そこには壁に背を預けて目を閉じ血を大量に出血している葛葉が力無く座って居た。それを見た緋月は息が詰まった。心臓の鼓動が早まり、不安が緋月の心を支配した。こんなにも心臓は脈打っているのに、緋月は生きた心地がしなかった。
「葛っちゃん――‼︎」
緋月がそう言い葛葉の下へ、駆け寄ろうとしたと同時に鬼丸が金棒を振り上げ今にも振り下ろす瞬間。雷の斬撃が大地に斬撃の跡を残しながら鬼丸に迫ってきたのだ。鬼丸は咄嗟に金棒でガードするのだった。
「葛っちゃん! 葛っちゃん……‼︎ 返事をしておくれ……‼︎」
祈る様に、願う様に、葛葉の体を抱き寄せる。首筋に指を置き、脈があるのを確認する。次に口元に手を翳し、呼吸があるのも確認した。葛葉はまだ生きて居た。
「……よかった。よかった……‼︎」
葛葉を抱きしめて、緋月は安堵の声を漏らした。すると薄っらと葛葉が目を開いたのだ。
「……緋月、さん?」
弱々しい声で、弱々しい力で、葛葉は力を振り絞り緋月を呼び、緋月の腕を掴む。虚な瞳に光が差す。所々の白銀の色が薄れていき、徐々に元の美しい紺色の髪へと戻っていった。
「葛っちゃん……!」
「…………らしく無いですよ」
涙目になりながらも緋月は葛葉の名前を呼ぶ。すると、葛葉は微笑みながらそんな事を言った。らしく無い、きっとそうなのだろう。今の緋月の顔は涙でぐしゃぐしゃなのだから。
「……緋月さん、らしい所を……見せて下さい」
「……あぁ、ボクらしい所を見せてあげるよ……‼︎」
「……よかったです。……私、に力になれる事、あります、か?」
目から更に出血し、吐血をする葛葉は構わず言葉を続けた。緋月から一雫の涙が落ち、葛葉の頬を濡らした。そして緋月は涙を拭い、葛葉の双丘を一揉みする。
「これだけで、ボクは戦えるさ」
「……ふふっ……らしいですよ」
葛葉は最初こそ驚きはしたが直ぐに微笑み、立ち上がり強大な敵に立ち向かう勇敢な背中にそう呟くのだった。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
前書きのは真っ赤な嘘ですからね!? 緋月は個人的に葛葉と律の次に好きなキャラですね!
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