十三話 【英雄】という一つの理
遅くなりました!
「……やっとかの〜」
鬼丸がそう言うと同時に、防いでいたナイフが弾かれ硬直していると、脇腹を物凄い衝撃が襲った。肋が折れる音と内臓が破裂する感覚を味わいながら、葛葉は家屋にすっ飛ばされた。更に背中を壁に強打した為に、肺の中にあった空気も全部吐いてしまい、背骨にも罅が入った。
「――ハッ‼︎ ――ハッ‼︎ ――ハッ‼︎」
過呼吸となり、全身の激痛に気絶しそうになるが、葛葉は手に力を込める。
『前を向け、歩を止めるな』
そう強制させるてくる声に、葛葉はただただ黙々と従うだけだったのだ。それが正しいのだから、そう思い歯を食いしばる。
「ハッ…………――ッ‼︎」
肺の中に空気がある『想像』をし、直ぐに回復する。超速で鬼丸へと迫り、逆手に持った右手のナイフを振るう。だが鬼丸には当たらない、避けた鬼丸へと次には左手のナイフが迫る。だが、やはり当たらなかった。
(……動きが速いの、それに髪の色も可笑しいのじゃ)
そう、葛葉の紺色の髪に所々に入っている白銀のメッシュ。それと同時に、今まで見てきていた葛葉とは一線を画すスピード。何かが可笑しい、そう鬼丸が思った時だった。ザシュと鬼丸の頬に、小さな切り傷が出来たのだった。血が一雫頬を伝う。切り傷は既に塞がっており、傷なんか無かった事になっているが、問題はそこではない。重要なのはLv.1の葛葉が圧倒的強者であるLv.12の鬼丸に傷を与えた事だった。
「……そうじゃ、そうなのじゃ。それでこそ【英雄】じゃ‼︎」
鬼丸に傷を与えれたのは歴代の【英雄】達と人間の巫女のみ。英雄候補と言えども、所詮はLv.1。だが、その絶対の壁を越えることが出来るのが【英雄】といえよう。
「ならばっ! わしも本気を出すのじゃっ!」
手を曇天の空に翳す、すると地面を破砕しクレーターを作った巨大な金棒が鬼丸の手へと動いたのだった。
「……これは一応神器での〜、名を『星砕』と言うのじゃ」
縦が平均男性の身長の二倍の大きさであり、横は持ち手から先までに行く間に膨らんでおり、凄まじい大きだ。それを軽々と持ち上げ、軽々と振り回す鬼丸に誰もが恐怖する。
だが、【英雄】は違った。
ナイフを構え、真正面から鬼丸へと斬り掛かったのだ。側から見れば、ただの自殺行為にしか映らない。案の定鬼丸が金棒を葛葉へと振り下ろした。地面がまたしても爆砕し、亀裂が走り、大地が断割する。
「……ん」
だがその一撃は獲物を殺す事はできず、ただ地面をかち割っただけだった。後ろからの葛葉の攻撃に、鬼丸は咄嗟に反応し避ける。が、プシュプシュと脚、腕に切り傷が出来た。
(どう言う事じゃ? 何故わしに傷を付けられる?)
避けたから当たるはずがないとかではない、まず不可能なのだ。Lv.12に傷を付けるには同レベルに至るか、同レベルの武器が必須となる。それなのにLv.1の葛葉が鬼丸に傷を次々と与えていることに、疑問を抱かない方が無理であった。武器もLv.12に傷を付けれる程強そうには見えない。なら何故、傷を付けれるのか。
(まさかこれが【英雄】の力とでも言うのか?)
【英雄】というのはこんなにも、強い力を持っているのか。と鬼丸はそう思い至った。
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