十一話 総力戦
勝てるんでしょうか⁉︎
「……………ぇ?」
思わず葛葉は小さく声を出してしまった。何が起こったか分からない。男が攻撃を仕掛けて、倒れていたのだ。
「か、掛かれーーーっ‼︎」
そして男性冒険者が声を上げると同時、鬼丸を囲んでいた冒険者達が攻撃を敢行した。総勢三十もの冒険者達が一斉に攻撃を仕掛けて来たのだ。だが次の瞬間、全ての冒険者が宙を舞った。ドサッ! ドガッ! ボガッ! と落ちる音がして、冒険者達が再起不能となった。
「……な」
後には傷も汚れもなく、汗も掻いて居ない鬼丸が残っていた。
「中々やるのじゃ〜。じゃが、所詮はLv.1よ。わしに掛かってくる度胸だけは買ってやるのじゃ」
口角を上げ、竜のような目を細めて、腕を鳴らしながら呟く鬼丸。たったそれだけ、たったそれだけのことだ。なのに、どうしてこんなにも怖いのか。
今まで戦ってきた敵よりも圧倒的に強い。『ゴブリン・キング』『食人花』『ワイバーン』そして魔王軍幹部リリアル。あのリリアルやメイドとも、この目の前の少女? 幼女? は別格だ。
(足が震える……。駄目だ、戦えない……)
動悸が早くなり、悪寒も感じる。手も足も震えて、歯がカチカチと鳴り、葛葉は戦意を喪失してしまう。
「……葛葉さん」
一部始終を眺めて居た律は、刀の柄を握り葛葉の姿を見て呟き、下唇を噛んだ。葛葉ですら戦意を喪失してまう相手、自分では何も出来ないとそう思ってしまう。律は、そんな自分が嫌いだった。
(ここで逃げてちゃ、絶対に強くなれない!)
柄を握って居た手に更に力を込め、電光石火で鬼丸の首を取りに行った。Lv.1とは思えないスピードで、狙った首は傷一つ与えられなかった。ギギギと刀は、鬼丸が立てる人差し指の爪と競り合って居た。
「……速さはよし、じゃが力がちと足りん」
ニッと悪魔の様な微笑みを浮かべると同時に、律が吹っ飛ぶ。起きたことは単純で、Lv.12のフィジカルで張り手の如く、律の腹部を思っきし叩いたのだ。ドォォン‼︎ と石材で出来た家屋の壁を突き破り、煙を立てながら律は家屋の中を転がった。
「さて、配下の孫のうぬには手荒な真似をしたくないのじゃがなぁ」
律が吹っ飛んだ方向を一瞥し、鬼丸は次の獲物――戦意を持って居る五十鈴へ忠告を交えた言葉を掛けた。
五十鈴は鬼丸と相対し、一度深呼吸をして覚悟を決める。目の前の相手には出し惜しみはできない、使えるものは使うを徹底できなければ行けない。瞼を閉じ、心を落ち着かせ、精神を統一する。すると五十鈴の周辺の魔力がうねり、五十鈴の下へ収束して行く。五十鈴の額には二本の大きな角が顕現して居た。
「……流石は候補と言ったところかの? ……良いぞ、掛かってくるが良い」
「…………――っ‼︎」
姿が消える様な錯覚を覚えるほどのスピードで五十鈴は鬼丸は盾を振った。だが当たり前だが空振りに終わる。直ぐに身体を動かし、背後を取られぬ様に移動する。警戒を解けば一瞬で戦闘不能にされる。
先の律もそうだったが、鬼丸と戦う時は大抵一瞬で勝負を付けるのが必須となる。だからら初手の一撃で首を刎ね無ければ勝てないのだ。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
律が可哀想ですね……。五十鈴はどうなるんでしょうかねぇ。
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