十話 街での戦闘
今日は遅れました!
「お疲れー」
「葛葉さんたちもお疲れ様です!」
配膳ワゴンを引きながら戻ってきた律に、子供達から解放された葛葉と五十鈴が労いの言葉を掛けてやる。配膳ワゴンに乗せられていた料理は全て無くなっており、ちゃんと行き届いたらしい。
「いやぁ疲れたなー」
「多分ですが、食べ物をあげる方が楽だったんじゃ無いですかね」
「……まぁ律は何か、子供達に怖がられてたしね」
恐る恐るモジモジしながら律が言うと、葛葉はカウンター言わんばかりに跳ね返す。律が仰け反り、そこまで言いますかぁ!? と言った表情をするが、葛葉はガン無視だった。
「にしても、まだまだ終わらんねー」
「ですね、もうそろそろ終わっても――」
律が北区の正門に目線を向けると同時に、葛葉が律を巻き込んで倒れ込み、五十鈴が盾を構えた。葛葉達の近くに居たギルド職員達を、五十鈴が押し倒して離れさせる。
そして次の瞬間、地面が爆砕した。
「――ぐっ!」
あまりの衝撃に、五十鈴が声を漏らす。五十鈴が防いだのは爆風だった。足の力をほんの少し、本当の本当にほんの少し弱めれば、軽く吹っ飛んでしまいそうな爆風が突如として発生した。それはまるで、目の前に台風があるかのようだった。
「…………止んだ?」
爆風が消えると同時に、葛葉は伏せていた身体を起こして、地面が爆砕した――五十鈴の居る方を見やった。盾を構える五十鈴の先、かなり大きなクレーターが出来た箇所の中心地に成人男性二人分の大きさの金棒が地面に突き刺さっていた。金棒の凹凸は全て鋭く尖っており、見てるだけでも寒気がするほどだ。
「一体何が……⁉︎」
誰かがそう呟いた時だった、スタッといつの間にかに――降り立つように現れた美少女。音も気配も無く、金棒の上に立って居た。
「……ほぅ」
「——っ‼︎ 冒険者の皆さん! 住人を守って下さい!」
煙が晴れていく中、自前の武器を構える冒険者達。ギルド職員が避難民の前に立ち、肉壁になる。その統率が取れた行動に、鬼丸は感嘆の息を漏らした。どう見ても弱い冒険者達なはずなのに、きちんと指示を聞き死に急ごうともしないのだから。
「皆さん! 落ち着いて下さい!」
「こちらです! こちらに集まって下さい!」
視界の端では必死に指示を出し、パニックに陥りそうな避難民達を抑えるギルド職員達が居る。そして目線を前へ向けると、こちらを唖然と見上げる葛葉が居た。
「……やっとなのじゃ」
「準備は出来ました! 冒険者の皆様、討伐を!」
そのギルド職員の指示に、一瞬冒険者達がザワつきだし誰が行くと目配せが飛び交う。だが、鬼丸がほんの少し動いただけで、雰囲気がガラッと変わったのだ。一般人以外は全員感じたであろう、鬼丸の放つ殺気に。一人のLv.1冒険者が、咄嗟に飛び出して剣を鬼丸に突き刺そうとして――頭が地面にめり込んだ。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
ここからは市街地戦です! まぁ、映画とかの銃火器を使った市街地戦では無いので、迫力は無いですが……。ただ、最強の巫女を相手に、葛葉がどう戦って勝つのか、それを楽しんで頂けたらなぁと思います!
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