一話 朝の一幕
ついに第五章‼︎
悲しみの連鎖は続くと言うが、それは事実なのかもしれない。人生生きてる内に、何回も悲しい経験があるのだから。
でも、それでも私は前を向き歩き出す――。
――空には、今にも雨が降りそうな雲が太陽光を漏らさずに漂って居た。
「……今日はなんか天気が悪いですね」
葛葉は珍しく早起きをしており、朝のコーヒーブレイクを堪能しながら、窓の外の空を眺める緋月に独り言のように声を掛けた。
「あぁ、嫌な空だね」
「最近は晴天続きでしたから、たまにはこう言うのもあるんですかねー」
コーヒーを冷まして葛葉は一口啜る。熱い! ではなく、暖かいコーヒーなので葛葉でも啜れるのだ。室内を見渡してみればいつもは騒がしい緋月が静かにしており、視界の端では五十鈴がパンパンとベッドのシーツの皺を伸ばして居る。
「葛葉様、コーヒーのお加減はどうですか?」
「うん、ちょうど良いよ〜」
ジャージの袖口からちょこっと手を出して、両手でコーヒーカップを持って居る葛葉は、ふにゃふにゃした雰囲気だ。いつもなら緋月が即絡んできて、緋月がボケては葛葉がツッコミを入れるのが通常。だが、今日は珍しく緋月が真剣な雰囲気を纏っていた。
「……葛葉様。髪の毛今解かしてしまっても良いですか?」
「んぅ〜寝癖すごい?」
「……はい。いつも通り凄いですよ」
「んじゃよろしく〜」
五十鈴は葛葉の後ろに向かい、虚空庫から櫛を取り出し、葛葉の髪の毛を慎重に丁寧に優しく梳いていく。髪の毛が引っかかって痛くはならず、というか一髪も髪の毛が引っかからないのだ。でもちゃんと葛葉の頭には寝癖がある。のにも関わらず引っかからないのだ。
「んふ〜」
気持ちよさそうに葛葉がほけ〜っとして居ると、空を眺めていた緋月が動きだした。
「……葛っちゃん、このあの予定って何かあるかい?」
「……? 特には」
唐突に聞いてきた緋月に葛葉が数瞬、間を置いてから応える。緋月も何か、手帳のようなものを取り出して、ふむふむと文字を読んでから、パタンと閉じた。
「今日は特訓しようか」
「……え、あ、良いんですか?」
「やっぱ何か用事あった?」
「いえ、こっちからお願いしたい程ですが……」
昨日は緋月とは特訓できなかった、だから葛葉と律、五十鈴と共に特訓をしていたのだ。でも、今日出来るのなら問題はなし。明日からクエストに行けるかもしれないのだから。
「葛っちゃんも久しぶりだろうから、今日は懇切丁寧に教えてあげるよ」
「ありがとうございます!」
緋月は微笑みながら、葛葉に嬉しい事を言ってくれた。葛葉も微笑みながら感謝した。朝からちょっと暗かった緋月だが、どうやらそれは葛葉の杞憂だったようだ。緋月はじゃね〜と手を振りながら、部屋から去っていった。
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